どど丼

けもの(仮題)のどど丼のレビュー・感想・評価

けもの(仮題)(2023年製作の映画)
3.9
人間の感情抑制が推進される近未来で、主人公が自身のDNAを"浄化"するために過去にダイブする…というSFサスペンス。「リベリオン」みたいな世界で「エクスマキナ」系のアートSFかな〜と思ってたら、想像の遥か上を行く難解映画だった。

全く異なる3つの時代に現実と虚構を織り交ぜながら介入していくという化け物みたいな複層構造に終始混乱を覚えつつも、余りにも恐ろしい映像と音の表現は面白く、徐々に何となく主題が見えてくる展開はなかなかの気骨。

一つ感じたのは、技術革新によって効率主義化した現代における希薄な恋愛観と、それゆえ顕在化するジェンダー観の理想と歪みに対するアンチテーゼ。これだけ混乱させておきながらそんな説教臭いメッセージかよと思いつつ笑、気持ちは分からなくも無いというか。1960年代後半に生まれた監督にとって、一世代前のヌーヴェルヴァーグ期の自由闊達な時代性への憧憬もあるのかな。

そしてこれだけのメンタルブローを喰らわせておきながら、エンドロールはまさかのQRコードを読み取らせる…という衝撃笑。ベネチアのプレミアでも同じ方式でやったらしい、すげえな。

ジョージ・マッケイのキャスティングが意外だったのだが、元々ギャスパー・ウリエルが同役にキャスティングされていたそう。改めて惜しい俳優を亡くしたなと感じたし、彼の演じるルイも見たかったけど、おそらく大きなプレッシャーの中でルイを演じ切ったジョージの魅力はしっかり炸裂していて本当に良かった。

作品に対して色々と思う所はあるのだが、とりあえずまた一から観たい(長いけど笑)。国内での配給は決まっていて、一般公開は2025年とのこと。今年のMyFFFで配信中の「ジャングルのけもの」は原作が同じ作品らしく、そちらも難解との事で見送っていたが観ようと思う。体力が許せば。。
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