リュック・ベッソンが実際の事件に着想を得て監督・脚本を手がけたバイオレンスアクションは、犬たちと共に犯罪に手を染めていく主人公を描く、ベッソンの原点回帰ともいえる、ダークでエッジの利いたエンタテインメント作品。
或る夜、警察に止められた1台のトラックの運転席には負傷した女装男性がおり、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。
「ドッグマン」と呼ばれるその男は、精神科医エヴリンの聞き取り調査で自らの半生について語り始める。
犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代、犬たちの存在に救われながら成長していく中で恋を経験し、世間に馴染もうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく青年時代。
犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていく為に犬たちと共に犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。
この犯罪ドラマを支えるのは社会の片隅で生きる弱者たち、住民たちを苦しめるギャングを犬を使って懲らしめるダグラス、そんな彼が職を探して辿り着いたキャバレーで出迎えるドラァグクイーンたち、離婚した暴力夫の影に怯える精神科医エヴリンらだ。
“神の使者”にも例えられる犬たちが活躍する本作は、「人間よりも犬を愛してる」と言う主人公の愛と暴力の切なくも壮絶な人生を浮き彫りにする。
