尿道流れ者

オカルトの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

オカルト(2008年製作の映画)
3.5
電波系交遊記といった感じの本作。無差別殺人の生き残りで事件以来神の声を聞くようになった江野さんというにやけたおっさんの密着フェイクドキュメンタリー。このおっさんの駄目っぷりと図々しさに笑いながらも、かもしだすなんかヤバイ雰囲気に魅了される。この監督のドキュメンタリーは怖さの部分と笑いの部分がとてもいいバランスで作品ごとにニュアンスは違うが、どれも楽しめる。また霊的な表現が初期の作品から一貫しているところも、作家性を感じてとても良い。

今回は霊的な怖さよりも電波系的な怖さ、何をするか分からない人の怖さで、ある種身近な恐怖の話。無差別殺人事件の犯人の意味不明な供述を視覚化したようなもので、なんとも言えない気持ち悪さや小規模な選民思想が怖い。

笑いの部分では、地獄だぞおじさんと江野さんの鞄の奪い合いというこれまた小規模な戦いがハイライトで、ごちゃっとした戦いと地獄だぞおじさんの使う安っぽい武器が面白くて悲しい。
最後の江野さんの計画前のカメラマンとのデートの小規模感もたまらない。地味なカップルがはしゃいでるのを見た時の冷めた心持ちで観ていたのが、いつのまにか江野さんの輝く笑顔とその覚悟に少し切なくなる。少しだけど。