サンヨンイチ

ある閉ざされた雪の山荘でのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)
2.2
なかなか理解に苦しむ、
見続けることがしんどいと思えてしまう
映画を見るのが心の肥やしになるんだなあ、と何故か腑に落ちる迷作。

名作『容疑者Xの献身』の原作よりも
俄然こちらの原作を見たくなってしまうのが世の不思議。全く違うストーリーになっているのだろうけれど。

脆弱すぎるクローズドサークルに縛られ続ける柔軟性のない若者たち。
「皆さんの過去に一体何が?」と言わせるためだけに外側から用意された記念受験者だけがひとり、探偵役として暗躍する。
絶対に呼ぶ必要のなかった部外者が
何故か持ってきたカメラのお陰で事件の真相が呆気なく明かされていく。
よりによってアリバイのない人を犯人と決めつける
最も根拠の弱い状況証拠が決め手になる解決パートは
その先にある真相の、“信頼できない語り手”的な入れ子構造やどんでん返しを期待させる見え見えな釣餌としてストーリーラインから浮遊している。

しかし真相に待っているのは
映像で見るとより悲惨な八つ当たりを基に企てられた
杜撰な復讐と、
製作側の都合が透け見える、
余りにウェルメイドなサクセスストーリーを前提とした偽善だったという体たらく。

また、メタ視点ではあるが
あれだけ粗野な演技の西野七瀬や中条あやみが
有名場劇団の一員としてあまつさえ
顔の周りを手でくねくねと縁取ってきせる
奇抜なパンフレットを発行しているかと思うと失笑を飛び越す笑いが込み上げてくる。

若手人気俳優の競演、は
何故か肩透かしを食らうことが多く
演技力の問題よりもそれを隠し通せない
脚本や演出の粗雑さにあると感じてしまう。
特に演者が多ければ多いほどその舵取りをできる人は少なく、
三谷幸喜くらいになってしまうのかな…と邪推せざるをえない。
一度、この手のミステリーを
茶化すことなく三谷氏に取り組んでいただきたい。