すみ

52ヘルツのクジラたちのすみのネタバレレビュー・内容・結末

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

自分を救い出してくれるような人に出会えたら、その人がなぜ自分を救おうとしてくれたのかを深く考えたい。優しい言葉を投げかけてもらえたら、その人がなぜその価値観に至ったのかを知ろうとしたい。

人が人を慈しみ愛する気持ちに性別なんて関係ないと思う一方で、そうではない価値観が存在もするから難しい。
性別なんて関係ない、今や当たり前のように言われているその言葉は至極真っ当に思えて、実際は当事者が抱えているたくさんのものを取りこぼしてしまうのだろうなと感じた。
もっとちゃんとお互いのことを話せてたらもしかして、タイミングがあってたらもしかして、と思う一方で、本人が抱くその感情を消すことはきっと、大切な人ほど難しい。

最低に思える人たちが最低なまま終わっていくのがよかった。改心させるのではなく、どう離れるかが大切。人間はそう簡単に変われない生き物だから。
個人的には、きこが家族とあっさりと離れる選択をできたのが驚きだった。
あと、虐待はどんな事情があれ絶対に許されるものではないけれど、我が子に「愛」という名前をつけた父親が消えて、母親が母性を持てなかった理由はもっと考えたい。

最後髪を切るときに愛の笑顔が見れて嬉しかった。誰かの役に立てること、は、自分の存在価値を自分自身が認めてあげられる、唯一の手段なのだなと。

柔らかな手、急な下ネタにも思えた夜の話題、一見似合わないひげ、いろんなものがさりげなくじんわりと結びついていくのが見事だった。
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