回想シーンでご飯3杯いける

私がケーキを焼く理由の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

私がケーキを焼く理由(2023年製作の映画)
4.1
ちょっと可愛らしい邦題が付いているので、新人パティシエのサクセス・ストーリーかと勘違いしていたけど、内容は全然違う。ケーキを焼いているのは法律家を目指す若い女性ジェーン。ケーキを焼く理由はあまり意識せず、原題通り「ケーキを持ってバーに座る」女性の話として観る事をお勧めする。

そのジェーンと、音楽業界で働くコリン。この2人が本当に魅力的で、アパートをシェアして暮らす様子を見ているだけで楽しい。社交的なコリンが内気なジェーンに提案したのが、週末毎に彼女が得意とする手作りのケーキを持ってバーに持ち込む事。他の女子友も混じえながら、ケーキを囲んでパーティーを繰り広げる描写は、美味しそう!可愛い!楽しそう!に加えて、バー毎に割り当てられた音楽のセンスが最高で、五感で楽しめる作りになっている。

やはり、映画にとって音楽は大事。挿入されるのはレミ・ウルフ、 シーア、フィービー・ブリジャーズ、レイ等、近年のガールズ・パワーを象徴するソウル、ロック系のアーティストに加え、ストーリーの展開に合わせて、主人公の親世代が聞いていたであろう古いポップスや、そのカバーも登場する。恐らくは30曲程度は使用されただろうか。近年観た映画の中でもトップクラスの選曲だった。

中盤以降の展開には敢て触れないが、実話ベースでありがちなお涙頂戴の演出は見当たらず、全編に渡って役者と音楽の魅力でドラマを形成している。

映画は映像と台詞だけじゃなく、やはり音周りも重要(その旨、プロフィールにも書いています)。本作は別にミュージカル映画ではないけど、大きめの音量で鑑賞する事をお勧めしたい。