回想シーンでご飯3杯いける

マッチ工場の少女の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
3.6
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督作品。今回鑑賞したのは「マッチ工場の少女」だ。

冒頭のマッチ工場の機械が動く様子を延々と捉えたシーンが強いインパクトを残す。反復する動きは勿論なのだが、心に刻まれるのは容赦のない音の反復。まずはこれを主人公の日常と重ね合わせてみる。

これまでのカリウスマキ作品よりも更に台詞が少ない。登場人物が本当にみんな無口。その代わりに社会情勢を映すテレビが世界観を伝え、音楽の挿入によって登場人物の感情を表現する等の手法が多用されている。

端的に言えば、男に騙された女の復讐劇で、ストーリーラインがはっきりしている。加害者、被害者、善人、悪人という線引きが容易なので、サスペンス映画として楽しむ事も出来る。

今回、久々に一連のカリウスマキ作品を観たくなったのは、自宅用にプロジェクターを購入したから。一旦はデジタル化されたものであっても、光を通じて白い壁に映し出すと、映画は特有の魅力を持つ。特に、かつてミニシアターと呼ばれた、映画文化に於けるある種の原点回帰を牽引したカリウスマキの作品は、映画のそんな魅力を再確認する上で絶好の素材となった。