ぶみ

コンクリート・ユートピアのぶみのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
4.0
狂気が目覚める。

オム・テファ監督、イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン等の共演による韓国製作のパニック・スリラー。
未曾有の大災害で崩落を逃れたマンションの住人等を始めとした生存者等の姿を描く。
マンションの臨時住民代表・ヨンタクをビョンホン、マンションに住む公務員・ミンソンと、看護師であるその妻・ミョンファをソジュン、ボヨンが演じているほか、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドユン等が登場。
物語は、地盤隆起により一瞬にして廃墟と化したソウルで、唯一崩落を逃れたファングンアパートを舞台として、アパートの住人や、アパートに侵入しようとする部外者等との生存競争が描かれるのだが、基本的にはアパートとその周辺しか動かず、かつ救助も見込めないような状況が見てとれるため、ソリッドシチュエーションものとして展開。
地盤隆起の原因や明確な理由は語られず、建物が一瞬にして崩落する大災害のシーンはあるものの、予告編で描かれるものがほぼ全てと言っても過言ではないのだが、災害後の状況が大半を占めるため、地盤隆起は一要因でしかなく、これが例えばパンデミックや、大戦、あるいは気候変動だったとしても、ある程度成立する展開であることから、ディザスターものというよりも、突然の危機に巻き込まれた人々が、どのような行動をとっていくのかというドラマがメインとなっている。
通常なら、皆携帯電話を取り出して情報収集したり、連絡を取り合ったりすると思われるのだが、そもそもそんなシーンは皆無であるため、それだけで、いかにこの状況が厳しいものかを示していたのは良かったところ。
また、臨時とはいえアパートの住民代表を選ぶため、住民間で会議を開くシーンは、現実にそうなった場合でも必要だと思われるし、部外者をどうするのかを多数決で選ばなければならないというのも、起こりそうな出来事であり、なかなか興味深かった内容であるとともに、代表として選ばれたヨンタクが、徐々に独裁者的な側面を強めていく様をビョンホンが怪演しており、閉鎖された空間に漂う独特な空気感のもと浮かび上がる彼の横顔は、もはやホラー。
クルマ好きの視点からすると、冒頭、韓国の高度成長期にアパートが続々と建設される様子が登場するのだが、その工事現場に一瞬映ったダンプトラックが、日野のZM型だったのは懐かしさたっぷり。
前述のように災害そのものは一要因でしかなく、地球レベルでの何らかの危機的状況における人々のあり方に焦点を置くと同時に、サスペンス要素を盛り込むことでエンタメ性を高めているため、コンクリートをメインとした灰色基調の絵面でも飽きることはなく、その映像の解像度は流石の一言であり、途中から、ヨンタクが堤真一か遠藤憲一、ミンソンが東出昌大、ミョンファが浜辺美波に見えていた良作。

ただ、普通の人たちでした。
ぶみ

ぶみ