めちゃくちゃ良かった、オススメです。
伝記ものではあるので、フォン・エリック一家について少し予習した上で今作の鑑賞に臨んだが、呪いとしか言いようのない悲劇の連鎖はホラーやスリラー味すら感じさせ、一家のことを知らずとも楽しめる作りになっていた。
そして、フェミニズムの文脈にも落とし込まれさえしていくんじゃないのかという作品にも思えてきて、しかもそれがプロレス映画！？ということに画期的であると言わざるをえない。
同じくプロレス映画である『カルフォルニア・ドールズ』とはまた違った味わいだ。
今作における父親の過度な期待は、社会における男性の役割、競争して勝っていくことへの期待、願望のメタファーのように思えてくる。
男性性は男性にとって"普通に"生きていくためには必要とされ続けるし、それ自体が社会からの刷り込みとしか言いようのない呪いに近いものだと感じる。
年々、男性性から下りていく話に滅法弱くなっていく自分にとってはやはりラストシーンで落涙してしまうのは仕方なかった。
このシーンで濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』も思い出してしまう。
別シーンだが、天国で兄弟たちが邂逅を果たすシーンも映画的快楽に溢れていて好きだな。
当然だけど、プロレスシーンの気合いももの凄い。
［2024年 69本目］
