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アイアンクローのsavageのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
5.0
みなさんはアイアンクローやられた事あります?自分は中学生の頃、柔道部のやつからかけられましたが発狂寸前でした。顔もヤバいが腹がもっとヤバい。
スパイ映画とかの拷問シーンでアイアンクローが無いのが不思議でなりません。

こんなに面白い映画なのに五つ隣のカップルはスマホをいじることしばしば。ええ、もちろん飛び込んでアイアンクローかけましたよ(これはもちろん冗談だぞ!)

さて130分1本勝負。プロレス映画のアイアンクロー感想です。呪われたエリックファミリーを巧妙な構成で描いてます。
もう泣きっぱなし…。フレアー戦でのある行為の意味を知ったときには感情が爆発。完全にこの作品にKOされました。

いやホント構成が上手いんですよ、プロレスをしっかりエンタメとして認定しながら、スポーツ根性モノとしても融合させてる。
ただの毒親映画として切り捨てることもわかりますが、自分はそれだけでなく複雑な思いでした。

父親のフリッツフォンエリックはアイアンクローでのし上がった名レスラー。まさに裸一貫でテキサスを支配する地元の名士にまでなります。
自分で団体を運営しビジネスマンとしてもそこそこ有能。
引退後はやはり息子に跡を任せるのは当然の成り行きです。
今現在でもフレアーやローデスの息子・娘さんがレスラーとして活躍してます。なので2世レスラーとして育てるのはそこまで酷いは思えない。
NWAはアメリカ最大の団体。チャンピオンになるというのはアメリカマットを支配するということ。父親は息子に夢を託します。
本人たちもお坊ちゃん育ちなので、最初はレスラーになるのは当然と受け入れてます。
家族みんなの食事シーンがホント美味しそう!

そして、びっくりしたのがプロレス中継の雰囲気が当時とそっくり。
シークに始まり、ブロディ、レイス、フリーバーズなど…懐かしいなぁ。
微妙に似てるのがなんともいい!
エリック兄弟がフリーバーズと抗争してるときは人気も凄かったらしいですね。
この時が幸せの絶頂…
ラグビーのシーン良かったなあ。

後半からはシンドイシンドイ…
自分は兄弟の悲劇を知ってますが、それでもショッキングに魅せられますね。
あの足のシーンとかの演出とか。
負の連鎖は止まらない、身体がプロレスラーとして向いてない五男のマイクは可愛そうだった。バンドシーンとかのエピソードとか入れてくるのがまたニクイ!

…ただプロレスをしてきて美味しい思いもたくさんしてきたわけで、呪いというよりはしがみつくしかないという状況にも感じますな。親父含めて全員プロレスに向き合ってたのは事実かと。
そして重要なのは、スポットライトを浴びた人間はなかなかカタギには戻れんのですよ…

…さてこの映画は、エンタメの悲劇も描いてます。
1980年から音楽などのエンタメが急激に発展。モスクワ五輪ボイコットもありましたねえ。
プロレス界もしかりで、ここら辺から完全にショービズ展開が進みます。
デカくて強いだけのヤツがウケる時代は終焉。しゃべりとパフォーマンスが上手いタレント性重視の時代になります。
エリックの団体だけでなく、歴史ある有名団体も時代の波にのまれていきます。
この映画、それもキッチリ描いてる!
そうです、リックフレアーです。
金髪イケメンの狂乱の貴公子!カッコ良かったな〜。ちゃんとフレアーダンスしてるし。めちゃくちゃオーラある撮り方してる!うますぎ!

もしもデビットが存命だったとしてもどうでしょう?クセが弱い兄弟はそこまで大成しなかった気もします…。マジメすぎて…
その1番マジメなキャラ、ケビンを演じたザックエフロン良かったです。遠くを見つめる目がいい!そしてリリージェームズもいい。
家族思いで自分が才能無いことに気づいてる男の最後の決断は…

総じて監督の愛を感じる大傑作でした。音楽の使い方も抜群に上手い。
家族は家族にしか救えない。このテーマもグッド!
最後まで父親フリッツの心情を明確にしないのも。結局昔のレスラーのままだったのでしょうね。古き良きプロレスと家族を愛した無骨な男でした。
よーく考えましょう。息子6人が1人を残して、みな怪死と自死ですよ。
普通の人間なら発狂するのでは?
これは自分の推測だけど、あくまでエリックというキャラをリング外でも貫き通したんじゃないかな…。
確かに褒められた教育ではないけど、凄い男だとは思います。

どうでもいいけどザックエフロン、あなた鍛えすぎだよ…少し心配…ステロイドやってないよね(80年代からプロレス界はステロイド多用されてます)。
あと六男の存在が描かれてないのがちょいと納得いきませんが(これもピストルで…)
満点には変わりないです!
ラストの写真でまた号泣…😭
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