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アイアンクローのよのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.0
体感でいうと、家族みんなで幸福になることはかなり難しいのだが、不幸には一定のレシピがある。
親が子供で敗者復活戦をする、というのはそのひとつだ。親が子を駒としか認識できないのだから、たいていどこかでガタがくる。

この不幸それ自体は、悪いものではない、と私は思うーー思えるようになった。幸せだったかどうかと、自分の人生に満足しているかどうかは、関係が無い。
ただ、こうして不幸を消化するにはそれなりの機会や年月がいる。エリック家の不運はそれらが与えられないまま、個人の人生をゆうに破壊できる規模と頻度で不幸が襲ったことで、それはもう不幸を通り越して悲劇といっていい。

不幸の許容量というか、不幸が悲劇に変わってしまう閾値みたいなものがきっとある。それを意識すれば、多少は悲劇を予防できるのだろうか。
悲劇を鑑賞しているからこそ、悲劇に酔うのは恥ずかしいというか、それを防ぐ努力をしないのは不健全だという気がするのだが。

まあ、閾値について考えるに、私の不幸はしょせん消化できる程度の規模と頻度にすぎなかった、とはいえるなあ。
よ