ひこくろ

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章のひこくろのレビュー・感想・評価

4.7
(かなり長いです。あと、原作を読んでないうえでの感想です)

いろんなものを詰め込んで、ものすごい圧力でギューッと固めてしまったような濃密なアニメだった。

根底を流れるテーマは前作とそう変わっていない。
差し迫った現実の危機的状況と、それをリアルに感じられないでいる現代人の姿という感じ。
ただ、冒頭のシーンからもわかる通り、「侵略者が現れた」というだけの前作に対して、今度の状況は明らかに戦争で危機度とヤバさがはかなり高まっている。
なので、前半はかなりギャグ色が強めなのに、その日常を気楽には見ていられない。
逆に、その日常が続いていることにうすら寒いものを覚えてしまう。
たって、戦争をしているのだ。
大切な人がある日、突然殺されたり、殺したりすることが普通にあり得るのだ。
このギャップは前作を軽く超えていて、怖いなあと思った。

物語の動き方は中盤以降とても激しい。
凰蘭と門出の関係性が主だった前作に対して、今作ではこれまでに出できた人たちの考えや行動が詳しく描かれる。
それぞれに思いや思惑があり、それに伴い、物語も次々と新しい展開を迎えていく。
さらに、そこに前作とは違う感じのSF要素や、セカイ系や、友情なんかがこれでもかと盛り込まれ激動していくので、ついていくのも必死だ。

物語的にすごいと感心したのは2点。
1つは戦争の描き方。
話し合えばいいと頭ではいくら思ったって、大切な人を殺された(巻き込まれた)人はそんなに冷静でいられるわけがない。
その様子を、人間だけでなく、侵略者側も同等に、映画は何度も何度も描く。
そこに上から利己的に戦争を進める人たちの姿も重ねてくる。
多重的に戦争を描いてみせたって点には感動すら覚えた。

もう1つは前作で出てきた過去回想の回収の仕方。
前作観た時は、これ絶対にまとめられないだろう、と思ったものが見事に物語に収束され、そればかりか、その後の葛藤や決意なんかにまでつながっていくのは圧巻だった。
もう、お見事としか言いようがない。

アニメとしては、戦争のシーンをちゃんと残酷に描いたところがとてもいい。
いくつか出てくる戦争シーンは本当に怖いと感じさせるほどなのだ。
が、それにも増してすごかったのは、やっぱり人類滅亡(するのかしないのかはネタバレなので控えます)のシーンだろう。
アニメーションとしての臨場感、恐怖感のすさまじさ。
大切な人までもがあっさりと消えていく儚さ。
何度も繰り返されることによる衝撃。
そして、そこに持ってくる、予想外の劇中歌。
作画、演出、アニメ、音響……なにもかもが素晴らしかった。
これは数年に一度あるかないかレベルのシーンですよ。
マジで震えたもの。

面白さや衝撃度っていうことなら、僕は前作に軍配を上げる。
でも、残酷さの面なら今作のほうが凄まじい。
戦争の残酷さ、世界の残酷さ、人間の残酷さ、物語としての残酷さ。
いろんな面の残酷さが溢れていて、前作とはまた違う意味ですごい作品だと思った。

前章観た時には、後章次第だろう、みたいなことを書いたけど、後章も予想の斜め上をいく出来で戸惑っている。
それでも、前章・後章併せて、傑作であることは間違いない。
それだけは自信を持って断言したい。

ぶっちゃけ、一度観ただけでは頭が追っついていかないので、また観に行こうと思います。
原作とラストが違うらしいので、原作も読みます。
ひこくろ

ひこくろ