このレビューはネタバレを含みます
東京フィルメックスにて鑑賞。
結構好みだった。画面の重さと静けさと他者との分かり合えなさがよく映っていた。ただ結構ふわふわした着地点な感じが惜しくもあった。
人の愛し方って誰かに教わるわけではないけど、自分の愛し方でしか他者を愛せないのだなと思った。(でもそうするとただ単に押しつけの愛になってしまう。その様がひたすら描かれていた)
自分の愛を信じ、愛したその先に本物があるのかもしれないと思わせてくれるラストシーン。かなり好きだった。
最近生きていくなかで、挫折しそうになっていたから主人公の愛の哲学を通すところは響いた。自分の中にもある愛の哲学は自分も守り通したいと思った。
橋本愛の死んだ目の感じと、声の感じがサナエとすごくマッチしていてとても良かった。舞台挨拶でも彼女の言葉が素敵だった。
2度目の鑑賞(2024.2.3)
最高だった。1回目に見た時は物語を追うことに集中してたから2回目はより登場人物たちの感情にフォーカスして見られた。
こんなにも愛に向き合い、ひたすら愛を物語る作品だったとは。すごく刺さった。
沙苗の中の愛の哲学が変わっていく様を関係性を通して描かれていた。自分の中での愛を絶対的なものとし、その愛を向けた相手との時間が本物でそれ以外は虚構に過ぎないと思って生きている主人公。
ただ時間が過ぎていくだけの日々の中で、健太と出会い結婚する。健太といれば幸せと定義づけられているものが手に入り安全に安泰に生きていける。
そんな日々の中で、ある女性、足立との出会いでその平穏からいっぺん過去に引き戻される沙苗。隼人を思い出せば思い出すほど、健太に対する気持ちとはまるで違うということがまざまざとわかってしまう。
それゆえ、さらに自分の信じる愛の矛先である隼人を想わずにはいられない。だけど、そんなの現実ではないと隼人の妻である足立に言われる。現実舐めんなと。足立は常に現実を受け入れて生きていたから。
しかし、最後、隼人は沙苗に会いたいと話す。ここの会話がすごい。
どう聞いても決別の話で、あれだけ想っていて自分の愛の信念の象徴である隼人に会っても自分の信じていたものとは違ってしまっていることに気づく。
そもそも隼人に会いに行くのも、健太に対する気持ちを今後どうしたいのかを確かめにいくためで、それがはっきりとわかるのだ。健太と向き合う、健太との愛について沙苗なりに向き合う物語なのだと思った。60秒間見つめ合う。戦争はそれでなくなる。この2人はここから始まる。