言葉の実験劇場を銘打ち、既存曲、そしてパブリックイメージの解体と再評価から始まった中島みゆき・夜会。やがてオリジナル曲中心に彼女の世界観を表現する唯一無二のステージになっていく、その道筋における名曲・名アクトをダイジェスト。
ストーリー仕立てのものを楽曲単位で切って時系列で流す作りなので、どうしてもぶつ切り感は出てしまうのだけど、ヒット曲を量産し、もっとも世に連れた時期のみゆきさんのもう一つの表現の場としての夜会が何を伝えようとしていたかの資料として貴重だった。
飛躍的に進化していく映像技術、大掛かりになっていく舞台装置。時代は確かに激動の十数年を経ていることをスクリーンは映し出しているのに、中心で歌うみゆきさんは年々若々しく美しくなっていく。当時驚かされたあの感覚が錯覚ではなかったことの証明としても、一見の価値がある。
当初の「言葉の実験劇場」としての役割は、序盤のわかれうた〜ひとり上手で象徴的に表現されていた。一人歩きするわかれうた歌いのイメージを逆手に取ったようなスタイルと歌い方。やおら不敵なピースサイン。それもある。それだけじゃない。
楽曲はどれも力がある曲ばかりなのは分かりきった話だけど、舞台との相乗効果を感じたのは「あなたの言葉がわからない」。映像化してなかったウィンターガーデンは能とのコラボが格好よくて通して観たくなった。ラスト「記憶」は初めて聴いたけど名曲の予感