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マイ・スイート・ハニーのmorettiのレビュー・感想・評価

マイ・スイート・ハニー(2022年製作の映画)
4.0
韓国の名優ユ・へジンが初のロマコメ主演!
そんなショートケーキにサムギョプサルのったような映画あるの?と思って観てきました。
…甘いケーキにのっていたのはいい具合に塩味の効いたスイートポテトでしたね。
 
思ったより、いや、けっこう面白かった。
なんならちょっと涙目になったし、久し振りにこういうタイプのロマンチックコメディを観ることができてうれしくなりました。どうもありがとう。
 
出演作を熱心に追いかけるほどではないですけどわたしはユ・ヘジンさんが好きで、趣きのある貌(自由に意訳してください)ですけどカッコいい俳優だと思っております。
 
その俳優ユ・ヘジンの底力を見せつけられましたね…

主演作はあるけどもどちらかというと二番手三番手の俳優さんで名バイプレイヤーとして認知されていることのほうが多いと思いますけど、どうしてどうして、この映画はユ・ヘジンさんがいるからこそ魅力が爆発していると言えるし、ちゃんと韓国でヒットしていることが職業俳優としてのスター性の証左ではないかと思いましたね。
先日観た「梟」の王様とのふり幅もすげーよ。
 
オハナシは45歳の恋愛未経験で真面目変人のユ・ヘジンと41歳シンママで超ポジティブなキム・ヒソンがひょんなことで知り合い交友を深めるうちに好きになっていくけどさまざまな障害が現れ…という捻りのないド直球のロマンティック・コメディ。

ミソは主人公2人がそれなりに葛藤を抱えて生きている中年であることと、「エクストリーム・ジョブ」でおなじみイ・ビョンホンさん脚本によるコメディでキャラクターのコミック的なデフォルメと人間関係のバランスのよさ。

当世では〝男と女が安易に出会い恋をする〟タイプの物語は忌避されますけど、それを本作は絶妙な作劇で〝安易な出会いと恋〟のその先を描いており、ウェルメイドだけど軽さや安直さもありつつちゃんと実の感じられる映画になっていて、ちょっとした拾いモノになっていた気がします。
つーか普通にオモチロイ!
ロマコメとしての面白さや話の広がり方は「ラブ・アゲイン」を想起したりしましたね。

個人的な感触としては「エクストリーム・ジョブ」と同じ質の面白さがロマコメになっているという感じ。
シンプルだけど豊かなキャラクター関係や手数の多いコメディ要素などは「エクストリーム〜」を彷彿とさせるし、ラフさや強引さもある鷹揚が身上です。

明確な悪役はいないし、悪い人っぽいひとはいても滑稽味が持たせていて、作り手がこのフィクション世界に悪意を持ち込まないことの清々しさがコメディとしての作劇に直結しておりましたよ。

薬局のおばさんとかチキン屋のおじさんとか、物語の推進力にはなってないけど、主人公のキャラクターを反射しつつ世界観も広がる役の置き方の秀逸さがありましたね。
付け足したかのように出てくる軽トラ青年の〝ロミオとジュリエット〟シチュエーションと歌唱もなんかよかったな。

あとはまぁ、やはりユ・ヘジンですよ。
生まれてはじめて人を好きになる男の純情が、ユ・ヘジンの身体を通して真摯で美しいものとして提示される終盤にはちょっと涙ぐみましたし、人を好きになることは自分を好きになることでもある尊さが、あの趣きのある貌(自由に意訳してください)から溢れまくってましたよ。
真面目で不器用でちょい変人、というキャラクターを絶妙なバランスで演じ愛嬌に変えるユ・ヘジンの素晴らしさ。
おじさんがモゴモゴひとりごちて含み笑いするのが気持ち悪くなくて愛嬌になっているというね。

あとね、中年の男にとってははじめての、中年の女にとっては最後にしたい恋であるところが、中年のわたしにはフィクションとしてことさらに美味でした。

それから忘れてならないのがキム・ヒソンさん!
わたしはこの俳優さんをまったく存じ上げなかったのですけど、美しいのは当然としてめっちゃチャーミングだしコメディ演技が上手い!登場シーンは秀逸だし、ユ・ヘジンに心を同期させて観ている者としては好きにならずにいられない朗らかさと軽みがありましたね。あと攻撃力高いのもいいです。
このキム・ヒソンさんはテレビドラマのほうで人気なんだそうで、その人気者2人のロマコメのマッチングがヒットの要因かも知れませんね。
キム・ヒソンさんは45歳か…ちょっと韓国行ってくる。

外しの要素(つまりはユ・ヘジン)を大いに上手く組み込んだ王道のロマコメで、中年主人公ということで人生そのものへの讃歌みたいなニュアンスもあり、素晴らしかったですわ。
これがFilmarksの下の方にあるのが解せん!

甘いものは当然ながらキンパ!キンパ食べたくなるのでいい映画です。

それにしても、ユ・ヘジンがロマコメ主人公の映画が企画されヒットする韓国映画界と映画興行、うらやますぃ〜。
(ユ・ヘジンを日本の主演俳優に置き換えると渥美清しか浮かばなくて)
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