みむさん

真昼の女のみむさんのレビュー・感想・評価

真昼の女(2023年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて。

面白かった。137分みっちり詰まったドラマ。ユリア・フランクの同名小説の映画化。
⚠️キツい性暴力シーンがあるので注意。

従軍看護師ヘレーナが辿る過酷な人生、アイデンティティを消さざるを得ない運命、幼少期から描いてるのでこの尺も納得。
一人の女性の山あり谷ありの恋愛からナチスの台頭を感じさせる。
戦場もナチスを象徴する人や物も全く出てこないが、明らかに世界が進行形で変わっている。
その変化にシンクロするように変わっていく夫。ナチズムの台頭と侵食はまるで疫病のようだとある監督が言ってたが、まさにそれ。
家の外でその思想にどっぷり浸かり影響されているのがわかる。

出会った時は純粋に好意を持ち愛してくれた男性が徐々に変わっていく様は説明しなくても背景で起こっている恐ろしい出来事を想像させる。
アーリア人優勢思考、女性をコントロール、それが意のままにならないと……

一人の善良な人間は最初はそういう思想よりも愛が勝っているようだったのに、じわじわ悪に乗っ取られていくような。

ヘレーナも強くあり続けるのは難しく、子供と向き合うこともできず、逃げずにいることもできない弱さや間違いを見せ、生きるために選択したことが後々重くのしかかる。

ものすごくヘビーな物語、希望の見えるエンディングは原作とは違うらしい。

マックス・フォン・デル・グレーベンがすごい役をやっている。上映後に本人登場、とても爽やかお兄さんだった。リサーチをしてキャラクターを理解したが僕はああいう人とは距離を置く、あくまで演じるのが仕事…と。もちろんわかってるよ!