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雪山の絆のたむたむのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
4.1
「ここに比べたら天国はスイートルームだ」

1972年のウルグアイ空軍機571便墜落事故を綴ったパブロ・ヴィエルチ著作を基に、雪山の壮絶な環境下を生きる抜こうとする生存者たちの姿を描いた、J・A・バヨナ監督による史実に基づくドラマ。

日が経つにつれ痩せ細り憔悴しきっていく姿、日焼けと凍傷で浅黒くなった垢まみれの肌や、乾燥しきったカサカサの唇…さすがはバヨナ監督、リアルを追求した描写は文句なしの素晴らしさ。

題材となった事故自体は今まで何度か映像化されてきたもので、フランク・マーシャル監督イーサン・ホーク主演による93年作品『生きてこそ』は過去鑑賞済み。マークしてないし朧げにしか憶えてないので、追々再鑑賞したいところ。

事故の当事者たちはラグビー選手ということもあり、もともと基礎体力が高かったことも、この過酷な状況下を生き抜くことが出来た要因の一つだったのだろうと推察しますが、雪山に墜落…というだけでも絶望的なのに、そこから追い討ちを掛けるように、自然の脅威は次から次へと生存者たちを窮地に追い込んでいきます。私なら早々に、感覚がなくなるまで首を雪でキンキンに冷やしたあと、掻き切って自死するかな。。

本編はアダム・ドライバーとジェームズ・フランコを掛け合わせたようなイケメン、エンツォ・ヴォグリンシク扮するヌマのモノローグによって語られており、美しく雄大な自然と対峙する人間の存在が余りに小さく無力であることを、まざまざと見せ付けてきます。

遭難から救出までの奇跡の72日間を、圧倒的リアリティで綴った胸を打つドラマ。史実をもとにした作品としても一本の映画としても、優秀なクオリティである事は間違いありませんが、言わずもがな、生々しい事故描写およびサバイバルの様子や、ショッキングなシーンが多く盛り込まれているため、鑑賞の際は十分ご注意を。

エンドクレジットで映し出される写真群も必見。
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