冒頭から不思議なノイズが入るので何かと思えばペダルを踏む音だった。ピアノの音だけでなく息遣いも含めて坂本龍一から発せられる全ての音をスタジオの空間ごと切り取ったような映画で、観客はすぐそばにでもいるかのように全く音を立ててはいけないムードが支配していてとんでもなく緊張感を強いられる映画体験だった。クワイエットプレイスの比じゃない。
『美貌の青空』をすごく良い表情で弾いていたのに、途中で弾けなくなって何度もやり直す場面は泣きそうになった。怪しい場面がありながらも最後まで弾き切った『東風』もグッとくる。
2024年56本目 SAION