社会のダストダス

サイレントラブの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

サイレントラブ(2024年製作の映画)
3.6
顔面で選ぶ映画は意外とハズレが少ない。

言葉を話せない清掃員の蒼(山田涼介)、視力を失ったピアニストの美夏(浜辺美波)、明らかに当て馬ポジションの金持ち北村(野村周平)の三角関係。90年代の月9にありそうな話を2時間のお手頃な尺で楽しめて、そこそこ清々しい気分で劇場を出られた。

主役の二人はどうやって意思疎通をするのか、二人きりのときはモールス信号でも使うのだろうか。スマホがない時代なら、片方は手話を使って、もう片方は指文字を書かないといけないだろうから、今の時代って凄い。でも目が見えない人からすればスマホよりガラケーのほうが操作しやすいのかなとかも考えたり。

後半にかけては展開が思っていたよりエキサイティングな方向に向かっていったので、期待してなかった方向の満足感が得られた。山田涼介さんは僅かな回想シーンくらいでしか台詞がない。蒼が美夏の歩く先を先回りして交通整理をしている姿は、イケメンの絵面だから許されるけど、私がやったら見かけた瞬間にお廻りに通報されてしまう。

それほど抑揚のない時間の流れる本作において、浜辺美波さんの美夏は感情的に動き回る貴重なキャラクター。失明のショックで自殺しかけた自分を止め、支えてくれる蒼に対して想いを募らせていく。しかし考えてしまう、目が見えるようになった時、その彼が山田涼介ではなく江頭2:50だったとしても変わらぬ愛を貫くことが出来るだろうか。

野村周平さんはファーストカットの印象では「イケメン」「金持ち」「ピアニスト」「外車」「性格悪い」と邪悪そのもの。しかし、金持ちピアニストの北村が実際そんなに悪い奴じゃなくて、主役の二人と関わることでムカつく性格がブレていくところもベタだけど良かった。

少々バイオレンスなシーンもあり、急に『龍が如く』のサブストーリーみたいな展開になってくので、場合によってはデート向け映画詐欺になりそうな描写があったけど、自分の観た回はそんなに人がいなかったので、残念ながらキレてるカップルを観察することは出来なかった。※ちなみにキング・オブ・ザ・デート向け映画詐欺は『ミッドサマー』だと思っている。

クレジットに中島歩さんいたけど何処にいたのか全然記憶にない(笑)顔面強者たちのおかげで最後まで画面を集中して観ることが出来た、満足度は割と高め。