1964年アメリカ。モノクロ映画で上流家庭の母が主人公。30才の息子を溺愛し、詩を書く教養と落ち着きをもった女性が、自宅用エレベーターに閉じ込められる。息子は外出し、連絡手段もない中、町の浮浪者、チンピラたちが勝手に家に入り込み、乱暴狼藉を目の当たりにする。
落ち着いた郊外の豊かな住宅街が、モータリゼーションで人の歩かない町になり、貧困や犯罪が忍び込んでくるアメリカ社会の変貌に印象づけられる。チンピラのリーダー格は、浮浪者を動物扱いする一方で主人公をhumanと呼びながら、敵意を隠さない。最後には息子が母の愛情と束縛を重荷に感じ、自死を決意した遺書が読み上げられる。ストーリーの決着が見えないすぐれたサスペンス映画であり、後世にさまざまに翻案されていると思われる。