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靴みがきのadeamのレビュー・感想・評価

靴みがき(1946年製作の映画)
3.5
ネオリアリズモと称された戦後イタリアの厳しい世の中を生きる貧しい人々の悲哀をリアルに描いた作品群の一つに数えられるデ・シーカ初期の秀作。
馬を買い取りたいという共感しづらい少年たちの憧れは自転車やバイクに置き換えると身近なものに感じられ、一日一日を必死に生きる中で無垢な願いを抱いたばかりに悲劇的な運命を辿る物語として涙を誘います。
大人の策略が引き起こしたすれ違いによって引き裂かれる二人の少年の友情は、もう少し序盤の日々の暮らしの中で深掘りしておいてくれたらより悲劇性が増していただけに、あっさりしすぎな導入がもったいなかったです。
中盤以降は収容施設がその舞台となり、それぞれの環境で過ごす内に二人の溝が深くなっていく様は切ないです。
そしてそこで暮らすのが当たり前のようにすら見える年齢の割に大人びた子どもたちの姿は、生きていく為に少年時代が存在していない当時の敗戦国イタリアの社会を感じさせます。
ラストの悲痛な叫びとは裏腹に、全ての始まりであった馬は自由気ままに去って行くのが皮肉でした。
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