せいけ

アメリカン・フィクションのせいけのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
5.0
黒人作家がヤケクソになって書いたステレオタイプな黒人の物語が大ヒットするというブラックコメディ
もうこのプロットを思いついた時点で勝ち
気難しくて偏屈な主人公が直面する人種に関係ない普遍的な家族の物語とハチャメチャな小説家のサクセスストーリーが並行する
知的で風刺性の高いユーモアに観客共々映画と共犯関係になっていくような
自分が書きたいものと世の中が求めるものという根源的な作家論が白人が求める黒人らしさという自己のアイデンティティの問いかけにも絡んでくる脚本が巧妙すぎる
この手の作品としては珍しく主人公がそんなにいい人ってわけでもないのがまた面白い
ストレートに笑えながらあらゆる風刺に溢れている
そういった作品は数多あれど、本作のようなバランスで成り立っている作品は意外と観たことがなかった
ラストシーンのあの映画のオマージュも気が利いていて深いなと
この作品がヒットして評価されるほど、テーマ性が浮き彫りになってくる仕掛けにまんまと乗せられた