カタパルトスープレックス

アメリカン・フィクションのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.9
テレビドラマ版『ウォッチマン』などで脚本家として着実にキャリアを積んできたコード・ジェファーソンの初監督作品で、ステレオタイプとしての「黒人らしさ」を扱ったコメディー作品です。

セロニアス・「モンク」・エリソン(ジェフリー・ライト)は教鞭をとりつつ文芸的な小説を執筆している。文芸作品に「黒人らしさ」は必要なく、大衆作品にありがちなステレオタイプとしての「黒人らしさ」に違和感を感じている。差別の表現に対してフラットな視点を持っているため、生徒から理解を得られず、大学からも休職を勧められるのだが……という話です。

「差別ってなんだろう」という問いかけがテーマなのではないかと受け取りました。黒人に限らず、人間にはいろんな人がいる。それをレッテルで一括りにしてわかったつもりになっていることってありますよね。「中国人はー」とか「外人はー」とか「日本人はー」とか。差別の被害者としてのイメージも一部ではリアルなのだけど、全体に当てはまるわけでもない。

一方で文芸作品は大衆作品と比べて売れるわけではないので生活は決して楽ではない。みんなが求める「黒人らしさ」を表現したら売れてしまった。コメディーとしても笑えるし、皮肉としてもピリッと効いている。

キャラクター造形はジェフリー・ライトが演じる主人公の小説家が中心となっています。兄妹のクリフ(スターリング・K・ブラウン)とリサ(トレーシー・エリス・ロス)との対比が主人公の人物描写に厚みを与えています。ジェフリー・ライトは007シリーズのフェリックス役とか『THE BATMAN』のゴードン刑事とか主人公のサポート役のイメージが強かったですが、それが今回の主人公の押し出しが強くない役柄にもあってましたね。