『正欲』とか今やってる「不適切にもほどがある!」も似たものを目指していると思うんだけど、本作の方がずっと洗練されていると思う。要は、「多様性」とか「差別はよくない」というマイノリティへの配慮が、自分たちの自己満足に終わっているんじゃないかという話。我々はよく「黒人問題をこう描いていて偉い!」的な評価をしがちだが、それに対して、「それ、本当に分かってる?」と指摘してくる映画。
売れない作家である主人公がヤケクソ気味に書いた「黒人らしい」小説が高評価されてしまい、今の社会にある薄っぺらさを戯画化して描く。本作の良い点は、主人公が嫌な奴で、基本的に他人を見下している点。ジェフリー・ライトが演じてるからまだチャーミングだけど。終盤、コイツがある登場人物と討論をするのだけど、それがコイツの持っている持論に対する反論にちゃんとなっている点など、バランスのとり方が上手いなと思った。後、こういう対話を通じてしか理解は深まらないよなと思うわけで。
また、「薄っぺらさ」の描写も結構容赦がなくて、文学界の白人連中は総じて戯画化され、バカとして描かれる上、ナチュラルに差別的な発言をしていたりする(意図的ではない)。映画監督も黒人の問題を監督するのは「賞狙い」って言っちゃうし。また、文学賞の討論が終わった後の5人全員を捉えたショットは、この「薄っぺらさ」を象徴する会心のものだと思う。
コメディとしても本作は結構笑える。事態がどんどん深刻になっていく過程は「そこまでいくの!?」というジェフリー・ライトのリアクション込みで楽しいし、「ステレオタイプな黒人」を演じる彼の姿もどこかおかしい。面白かった。