マーケティングと作家性、ステレオタイプ。
まさにこの作品がアカデミー賞にノミネートされているのが最大の皮肉で、映画祭も作家性が強くて独創的な作品が選ばれるかというと、そう純潔ではない。
重要なのはマーケティング(宣伝/広報/PR)。どれだけ露出をして、世間の関心を集めることができるかが重要で、この関心を集めるための手法の一つとして、社会課題をテーマとして扱うということがある。
A24が凄いのは、「旬な」社会問題の選び方と作家性の両立だ、なんて言われたりもする。実はマーケティングの会社なのかも。
確かにこうして賞の影響で日の目を浴びることによって、ステレオタイプが助長されることも真実で、非常に複雑な問題だと思う。
でもマンクは「偽善」として捻くれた見方をしているけど、シンシアが言うように、賞やヒットがあるからこそ、今まで届かなかった声や物語が沢山の人に知られ、考えてもらうきっかけを作れることもある。
だから、そうした社会問題が「受けやすい」市場というのは、知りたい/理解したいという「善意の市場」なんだとも思う。まさに自分が色々な映画を観たい理由もそこだから。
「マーケティング」というと、作家からすると嫌な印象を受けるんだろうけど、資本主義の世界では、冷笑的な見方をするよりも、むしろ観客の善意を信じる方がいいんじゃないかなと思う。(それは迎合とは違うと思うし)