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アメリカン・フィクションのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.3
おもろ。

American Fictionってタイトルが、ばっちしハマってる。
Fictionってこうでなくちゃ。
あらすじにしてみると、Fictionでしかない。こんなこと現実では起きてないし、Fictionだからこそ笑えるし、気楽な気持ちで観れる。

一方で、Fictionだからこそ冗談が、冗談に聞こえない。
まさに、その主人公のMonkがFictionを書くことになる。
これまでは、文学として質の高い(とMonkは自負している)小説を書いてきたが、黒人作家というだけで黒人作家っぽくない小説を書いてるとして、見向きもされない。そんななか、黒人っぽい作品(今あなたが想像したものに限りなく近い)を皮肉を込めて冗談半分で書いたら、大ヒットセラーになっちゃうという話。
それを面白がって読む、映画化の話を持ち込む、人は全員白人。賞レースにも引っかかっちゃって、「やっぱ黒人の声は真剣に聞いていかないと」と提言を述べる審査員は、白人。

黒人は、その激動の歴史から、消費されるコンテンツになっている。
たとえ、その黒人が白人と、全く変わらない生活をおくり、実績を残していたとしても、黒人というだけで。「あ、黒人の人だ。差別に気をつけなきゃ」って思う。黒人を黒人として扱わないだけで、「良い行いをした」と思っている。

でも、周りを見渡してみれば、黒人だけがそうか?
アジア人も、日本人も少なからず同等の固定概念を世界中の人に植え付けられている。
忍者、侍、勤勉、真面目、謙虚。
それを、日本の誇りとして掲げてる日本文化も少なくない。
それって、このもの映画とそんなに大差ない。
Monkの彼女のCoralineが、Monkが書いた冗談Fictionを気に入っているのと大差ない。

そうやって文化は形成されてるし、
自分が被害者だと思っていたら、加害者になってるし。
加害者だと思ってたら、被害者になってる。
そう。それをFictionで感じよう。現実から離れているからこそ、自分が現実では見えない自分の周りの現実に気づく小さなヒントをくれるかも。

この映画にある、小さな幸せ、怒り、悲しみ、現実、非現実が自分の身の回りにもたくさんたくさんあるということを実感できる作品。
面白かった。
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