MasaichiYaguchi

異人たちのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.9
脚本家・山田太一さんの長編小説「異人たちとの夏」を、「荒野にて」「さざなみ」のアンドリュー・ヘイ監督が映画化した本作は、現代イギリスに舞台を移し、ヘイ監督の感性溢れる脚色と演出で喪失と癒やしの物語を描き出す。
ロンドンのタワーマンションに住む40歳の脚本家アダムは、12歳の時に交通事故で両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた。
そして彼は今、両親の思い出をもとにした脚本の執筆に取り組んでいる。
或る日、幼少期を過ごした郊外の家を訪れると、そこには30年前に他界した父と母が当時のままの姿で暮らしていた。
それ以来、アダムは足しげく実家に通っては両親のもとで安らぎの時を過ごし、心が解きほぐされていく。
その一方で、彼は同じマンションの住人である謎めいた青年ハリーと恋に落ち、甘い一時を過ごしていた。
死別した両親との交流、ミステリアスな隣人との恋の行方を描くこの幻想譚は、愛と孤独、喪失と再生、更にはセクシュアリティといった根源的なテーマを探求し、観客夫々の心の奥底にある記憶や郷愁を呼び覚ましていく。