カナオ

異人たちのカナオのネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

魂を慰撫する傑作だった。
時間だけでは癒えない痛みを、同じ痛みを知るものが寄り添ってあたためる。取り戻せない、わかりあえないと思っていたへだたりを、こわごわとでも歩み寄って埋めていく。癒されたものが今度は相手の不安をなぐさめて、安心していいんだと静かに語りかける。
切なさと優しさ、寂しさとあたたかさで胸が締め付けられた。

原作と邦画版は知らずに鑑賞。現実と幻、生と死が溶け合った描き方をされていたが、アダムも既に生を手放してしまった存在?だからこそ両親と再会を果たし、ハリーと交流もでき、ずっと孤独のマンションにとらわれていた魂のしこりを解いて星になり天に昇れた?
それとも、両親への思いに整理をつけて、自分の孤独とハリーの孤独に気付いて心のしこりを大きくせず、これからの生をまっとうすべく歩んでいくきっかけをつかめた?
どちらなのか分からないが、どちらにしても、救いがあってよかった。


映画館でも、レビューサイトでも、クィアに対する偏見や差別で凝り固まってしまい、この作品と向き合えない人が散見されたのが悲しい。本人の悪意というより、アダムの言っていたような"時代"、環境で植え付けられてしまった価値観なのかもしれないが…そんな悪しき環境による差別の再生産を断ち切り、アダムの両親のように性的指向でなく個人対個人の本質で判断して向き合えるようになればいいなと思う。
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