kojikoji

華岡青洲の妻のkojikojiのレビュー・感想・評価

華岡青洲の妻(1967年製作の映画)
3.7
1967年作品 監督は増村保造。若尾文子とは黄金コンビと言える。「卍」他若尾文子の数々の作品を手がけている。

 もちろん若尾文子を観るための映画なのだが、作品の凄まじさに忘れていた。もちろん、この映画、若尾文子映画の最高傑作候補の1つ。

 有吉佐和子の同名小説を新藤兼人の脚色。
世界で初めて麻酔を使った手術を成功させた華岡青洲(市川雷蔵)と、彼への愛を争う妻(若尾文子)と母(高峰秀子)との確執を描いた文芸作。

 当時、大映映画で飛ぶ鳥を落とす勢いの看板女優の先輩と後輩。若尾文子と高峰秀子の嫁、姑の争いが凄まじい。看板女優の女優同士の意地の張り合いも反映しているようで、とにかく二人の共演がすごい。
高峰秀子がものすごく怖いが、一歩も引かない若尾文子のしたたかさには驚く。この映画、これだけでも必見の映画だ。主演の、あの市川雷蔵の影が薄いぐらいなのだから。

 小さい頃、目の当たりにした嫁、姑の関係。幼い私は、祖母も母も共に好きなのにこの諍いが耐えられなかった記憶が蘇った。私の両親の夫婦喧嘩はほとんどは夫婦の関係ではなく、嫁、姑の諍いが原因だった。それを幼い私が理解するのだから、今考えるとあからさまの関係だったのだろう。

 もちろん、この映画の主題である医者の家の女の生き様の凄まじさには二の句が継げない。

 私は大学時代、先輩から農薬の効果測定に猿の頭を開く実験をしたと聞いてビビった記憶がある。幸いに私は虫の実験で終わったのだが。💦

 人間の前に猫での実験が先に行われる。多くの飼っていた猫が死ぬ。実験が進んでいく中で、薬を投与された猫が異常な足取りで廊下を歩くシーンがある。あれは絶対に薬物を投与している。このフラフラの猫の迫力はなかった。そして思ったのだが、あれは映像にしても大丈夫なのか?

 ナレーションによると、華岡青洲は世界最初の麻酔薬の投与によるガンの手術をしている。それならば当然その前に人間をモルモットにした実験が必要であったはずだ。だから妻に対する実験はこの映画のようにやっていたに違いない。今の医学の発展とは、こういうことの積み重ねだったんだと改めて思った。

 誰かのレビューに「隙のない映画」と書かれていた記憶があるが、まさにその通りの映画だった。あまりに張り詰めていて息苦しくなる。

2022.11.22視聴-516
kojikoji

kojikoji