ブラジル映画祭 in 東京、2024にて。
今回のブラジル映画祭の、私的目玉。
映画祭期間中でこの作品が観られる最後の日に。さすがに満席、ソールドアウトだった。(席が取れなくて劇場の受付の方に食ってかかる人がいたくらい…。そういうのはやめよう。。)
まず、もともと大好きなシンガーであったエリスだけれど、より一層彼女の歌に惚れてしまった。
「… なんて嫌なヤツ…」
当時、公私に渡るパートナーであったセザール・カマルゴ・マリアーノに対する侮辱的なジョビンの態度を目の当たりにして、エリスは小声でそう呟いた。
レコーディング当初はそんな最悪な雰囲気の中、作業は始まったのだけれど…。
それが、日程が進むにつれ、少しずつ歩み寄り、雪解けし、最終的には世界的な傑作を生み出すことになるまでの道筋に、愛を感じた。
ありきたりな表現だが、これこそ『音楽の力』なのだろう。
「音楽は与えるものだ。
愛とよく似ている。」 by エリオ・デルミーロ
「愛しているものからしか、奪えない。」 by ストラビンスキー
「作曲をするとき、鉛筆を使うよりもたくさん消しゴムを使う。」 by アントニオ・カルロス・ジョビン
「あなたのお母さんはどうやってあんなに感情の奥深くまで入って歌に向き合うことができたの?」 by ビョーク
(エリスの息子・ジョアン・マルセロ・ボスコリがビョークから聞かれた言葉。)
「現代の音楽にはアートとしての自由さがなく、説明的。」 by フンベルト・ガティカ(このアルバムのエンジニアで、その後クインシー・ジョーンズやマイケル・ジャクソンなど、名だたるアーティストの音に携わっていく。)
たまたま最近、このレコーディング・メンバーでもあるルイザォン・マイアの音源ばかりを意識して聴いていたので(というか70年代のMPB 関連の作品聴いていれば自ずと彼のベースプレイを聴くことになるのだけど…。)、映画館で、大音量で彼のベースプレイを聴くとまたその太いグルーヴが格別。
78年のモントルージャズフェスティバルの映像は殊に最高。
両者の関係が良好になってからの会話で、トムが話す、アリ・バホーゾの素人の歌手とのやり取りで「tom 」に絡めたジョーク… 「トム・ジョビンはこんな駄洒落も言う人だったんだ…」とちょっと微笑ましかったり。
エリス・へジーナの、この世からの去り方は胸が痛くなるけれど、こうやって没後40数年経ってもその歌からは心が震えるほどの感動をもらえる。
まさに、Só tinha de ser com você。
「あなたでなくてはならなかった。」
… とてもじゃないけど、今回一度だけの鑑賞じゃ足らない…。ぜひ、ソフト化〜もしくは配信希望!