寝木裕和さんの映画レビュー・感想・評価

寝木裕和

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SELF AND OTHERS(2000年製作の映画)

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不在なるもの… 、を映しだそうとする時、ふいに立ちあがる幻想。

牛腸茂雄という夭折した写真家の残像を感じさせながら、そこには明確に佐藤真監督の目線があって。

そうして出来上がった作品は、ドキュメン
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HAPPYEND(2024年製作の映画)

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近未来の、日本。

でも、これは近未来という枕詞を添えなくても通用するくらい、現代のこの国のリアルな問題とリンクしている物語。

高校生活最後の、不安と期待の折混ざる時期を描いた作品だけど、それを過剰
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石がある(2022年製作の映画)

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この世界に存在する多くの人は、日々、保守的なルーティーンを生き、ときどき起こるハプニングに一喜一憂するという人生を送っている。

彼も、そうなのだろう。

想像してみる。

彼の毎日はいつも、両親の位
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夜の外側 イタリアを震撼させた55日間/夜のロケーション(2022年製作の映画)

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5時間40分…
正直なところ、一瞬たりともだれる要素のない、とんでもない作品だった。

赤い旅団〜 そして彼らが引き起こした(と、公にはされている)アルド・モーロ誘拐事件については、現代なら例えばネッ
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風の中の牝鷄(1948年製作の映画)

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小津作品としてはかなり異色だとは思う。

小津自身、… 及びこの後コンビを組む野田高梧、両氏共が心がけていたのは普遍的な、特定の時代性を感じさせないテーマだっただろう。

けれども、この作品は戦後 間
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狂った一頁(1926年製作の映画)

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オリジナルの無声版と、続けてニューサウンド版を。

比較するつもりで続けて観たわけではないけれど… これニューサウンド版で観ると、すっと入ってくる。

村岡実氏の尺八はもちろんのこと、アバンギャルドな
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リトル・ワンダーズ(2023年製作の映画)

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斬新な世界観で、なんともオリジナリティ溢れる冒険物語を描き出す監督が現れたものだな、と。

壮大な森の風景を映し出したかと思えば、どこかキッチュなカメラワークもあったり、いろんな意味で新感覚。

登場
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マミー(2024年製作の映画)

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観る前から、いろいろ考えさせられるだろう… と、心の準備をして行ったのだけれど、それを大きく超えるくらい、考えさせられた。

良い、とか、悪い、とかではない、真実はどこにあるのか。

… でも、あの当
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リンダはチキンがたべたい!(2023年製作の映画)

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少女と母親に起こってしまう哀しい出来事から始まるのだけれど、その喪失を二人で取り戻していくまでの清々しい物語を、観客は一緒になって体験することになる。

父親が天国に行ってしまった日のことを、赤子だっ
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Billie ビリー(2019年製作の映画)

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観始めてしばらくして、
「あ、これ観たことあるな…」
と、気づいた作品。
そうそう、以前『ピーターバラカン映画祭』で観たのだ。

ビリー・ホリデイという人が、二十世紀を代表する(そしてある意味その時代
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彼の見つめる先に(2014年製作の映画)

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先日、日本初上映となるブラジル映画、『デビルクイーン』を観て衝撃を受けたので、なにか他のブラジル映画を… と思い、こちらを。

その共通点は、クイア。

でも、あの『デビルクイーン』が「破滅的」という
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デビルクイーン(1974年製作の映画)

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いろんな意味で衝撃だった。

まず、1973年の時点で、こういう形のクィア映画を完成させていたということ。

そして、ブラジル国外… 特に北米の所謂「ブラックスプロイテーション」映画の影響も読み取れる
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近松物語(1954年製作の映画)

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すごい作品… ストーリテリング力に凄みを感じさせる近松作のリメイクの仕方だと思う。

物語運び、映像の美しさもさることながら、長谷川一夫、香川京子、南田洋子、進藤英太郎… 俳優陣の演技も素晴らしい。
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ジョン・レノン 失われた週末(2022年製作の映画)

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とてつもなく、オノヨーコが極悪人として描かれている。
いや、実際、メイパン側から見たらそうであるし、ヨーコが彼女とジョンにした行為は、愛憎まみれるジョンに対する気持ちを鑑みても、なかなか酷い。

作中
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めくらやなぎと眠る女(2022年製作の映画)

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これを観てまず、思ったこと。

やはり村上春樹作品が自分にはフィットしないということ。

しかし、この作品は、そこを「上手に」改変している。

まず、村上作品に感じること。
それは彼の物語からはいつも
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青春群像(1953年製作の映画)

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ラストシーン。
それの素晴らしさによって、その作品が一生心に残るものになってしまうということが、稀にある。

フェリーニの、長編3作目にあたるこの作品は、まさにそれではないか。

のちのフェリーニ作品
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Pearl パール(2022年製作の映画)

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ミア・ゴス、凄すぎます。

A24 が好みそうな、常軌を逸したサスペンス系。(ある意味、『ミッドサマー』的でもある。)

けれど、ただただクレイジーな絵ばかりが続いて物語性としては脆弱だった『ボーはお
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ヘカテ デジタルリマスター版(1982年製作の映画)

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今後、男女問わず、どろどろの恋愛沼に嵌って、私生活が崩壊してしまった友人を見たら、「ヘカテってる」と言ってしまうかも。

… というのは冗談だとしても、もしかしたら正気を失ってしまうほどの恋の経験も、
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冬の旅(1985年製作の映画)

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「楽して生きたいだけなの。」

そう言う主人公モナに、ただ嘲笑する人は現代でも… いや、これほど社会がそっけなくなってしまった現代だからこそ多いかもしれない。

彼女がここまでにどんな体験があって、リ
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ブラック・ダリア(2006年製作の映画)

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稀に、ぜんぜん監督の意図してないところなのに、思わず笑ってしまう作品ってあるのだけれど。

この作品はまさに、それ。

なんだろう、なにか焦点が掴みづらくて、ミステリータッチではあるのに、身に迫るよう
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時々、私は考える(2023年製作の映画)

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主人公フランの、他者と繋がりたいのだけど上手くそれができないもどかしさを、押しつけがましくない演出で(むしろとても静謐な描き方で)綴っていて、余白が多いからこそ、より一層 胸に迫る。

そうして、傷つ
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ブリキの太鼓(1979年製作の映画)

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誰しも一度は思ったであろう、「今現在の大人になった感覚のまま、姿形だけ子どもだったあの頃に戻れたら。」

そんな発想から生まれた物語だと考えると、アバンギャルドでもエログロでもない作品。

なぜなら、
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きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

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なるほど、佐藤泰志原作の物語を映画化すると、そこはかとなく同じ匂いがするものが出来上がるのだと痛感した。
『そこのみにて光り輝く』然り。
当然といえば当然なのだけど…。

こういう、若さゆえの閉塞感漂
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墓泥棒と失われた女神(2023年製作の映画)

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墓泥棒の一人、アーサーは亡き婚約者ベニアミーナをずっと想い続けている。

他の墓泥棒の仲間とも、彼らを裏で操っているスパルタコとも、どこか距離を置いているようなアーサー。

この作品はさまざまな国の言
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ロビンソンの庭(1987年製作の映画)

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山本政志監督作品が一挙に某サブスクにて配信されていたので、まずはコレを、と。

サントラ盤のレコードは何百回… 何千回と聴いたか分からないほどだけれど、肝心の映画本編の方は意外と頭から終わりまで通して
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

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140年前の、西部開拓時代のアメリカ。
そこで露呈される「人間の深層心理」は、言うまでもなく現代の人類にも見られるもので。

他者に対する「無知」から差別やジェノサイドが起こりうるということ。

その
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地に堕ちた愛 完全版(1984年製作の映画)

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一週間限定の冒険譚。

例えば、オズの魔法使いみたいに「あ、いま空想の世界が始まった。」と、一目瞭然で分かるなら話しにも入り込みやすいのかもしれないけれど、この作品のシャルロットとエミリーはいつのまに
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ヴィタリナ(2019年製作の映画)

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徹底的に仄暗い画面。

しかしそのことが逆に、ヴィタリナの亡き夫の生活していた地域で彼ら移民が生きていくことの過酷さを、わずかな光がまるで目の前で起こっているかのように、痛々しく映し出す。

実際に「
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火の娘たち(2023年製作の映画)

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私は同じくペドロ・コスタ監督の長編作品、『ヴィタリナ』との同時上映で鑑賞したのだが、実際その『ヴィタリナ』の予行練習的なものとして作られたのが、この短編作品とのこと。

しかし内容の方はこちらの方がか
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関心領域(2023年製作の映画)

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これもまた、今年の問題作の一つと言われることだろう。

決して映されない、壁で隔離され日常的に虐殺が行われている空間と、その横で平和で豊かな生活を送る一家。

もしかしてそれは、ナチスによるホロコース
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ウィズネイルと僕(1988年製作の映画)

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二十代前半の頃、彼ら二人と似たような生活をしていた。自堕落な、ただなんとなく過ぎていく毎日。
ニューヨークで偶然知り合った人を頼って、私が高円寺のその人の家に転がり込んで始まった、かなり駄目駄目な生活
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ロスバンド(2018年製作の映画)

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sns を何の気なしに覗いていたら、『リトルミス・サンシャイン』を好きな人なら気にいるはず!… と、とある人が呟いているのを目にして、この作品を観てみた。

うん、軽い。
軽く、さらっと観られる作品。
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イメージの本(2018年製作の映画)

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避けていた。

難解なものも多いゴダール作品。

けれどお家芸的な切り貼りで成り立っているわりに、それほど難解とは思わなかった。(飽くまで彼の作品の中では。)

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『 社会は共同正犯によって成
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異人たちとの夏(1988年製作の映画)

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同じマンションの住人ということで出会ったケイとのラストの方の展開は(というか演出は)現代の視点で見ると若干のお粗末感は拭えないけれど… (これは完全に時代性でしょう。)

それでもやはり今はもうこの世
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フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

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兼ねてから、ノーラン作品は自分にとっては難しい部分もある… というか、この人、頭良すぎて観る側を置いてけぼりにしてる… ことに気づいてない時があるような…。

例えば、『メメント』などは(ノーラン監督
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革命する大地(2019年製作の映画)

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私自身がペルーの農村地域を約一ヶ月ほど滞在していたこともあって、とても興味深くこの作品を観た。

日本という国から見てもこの作品から考えさせられることは大きいのではないだろうか。

と言いながら、まず
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