e

Hereのeのレビュー・感想・評価

Here(2023年製作の映画)
4.5
たっぷりの木漏れ日に包まれるマインドフルな長い散策。
書きかけの結末は短編小説のようでした。

主人公は不眠症で、移民の建設作業員。
仕事仲間との関係は良好そう。一人マンションに帰ると"ここが俺の家だ"とつぶやきました。
アイデンティティに問題があるのか、疲れが溜まったのか、過去に何かあったのか。

休暇で帰省の準備中。車は故障していて、冷蔵庫には余り物が。それをスープにして知人や友人たちへ配ることに。
夜から朝、そして昼へ移り変わる眠れない時間。変化していく景色のなかを歩き回っているうち、彼は植物に興味を抱きはじめたようでした。

突然の大雨。チャイニーズレストランで女性と出会いますが、ロマンチックなこともなくそのまま別れます。
しかし、主人公が抱いた植物への興味が、またふたりを近づけることに。

穏やかなユーモアと思いやりが散りばめられた優しいエピソード。
物語の先を焦るような気持ちは、少しずつ解きほぐされ、小さな変化に目が止まりだします。
日焼けしたレコードジャケットのような、柔らかいスタンダードサイズの映像に、自然の音や色が溢れていて、耳も目も感覚が研ぎ澄まされていき、吸い込まれるように無心に。

清々しい気分で劇場を出たら、いつもの道で少し緑を見つけました。
e

e