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Inshallah a Boy(英題)
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『Inshallah a Boy(英題)』に投稿された感想・評価

4.2
海外で幾つかの賞を受賞しているヨルダン映画。夫の急死で一変するシングルマザーの話。イスラーム的相続のルールがあったり、社会的メッセージが強い作品。上映後の解説を聞かないとわからない所も多い。ちなみに主人公の女優さん、映画では地味なシングルマザーだったけど、スチール写真メチャ美人。イスラエル出身のパレスチナ人かつキリスト教徒だそうです。
akrutm
4.0
夫が急死し、一人娘を抱えて途方に暮れる未亡人の女性が、義兄による自宅の売却から逃れるためについた嘘がきっかけに、次第に追い込まれていく姿を描いた、アムジャド・アル=ラシード監督の長編デビュー作。2023年のカンヌ国際映画祭批評家週間で上映され、カンヌで上映された史上初のヨルダン映画となった。

アスガー・ファルハディの『別離』などを想起させる、イスラム社会の法や慣習を背景にした社会派サスペンスである。映画の背景にあるのは、イスラム法に基づくヨルダンの父権的な相続制度。息子がいない場合には、亡夫の財産の一部や子供の後見権が亡夫の男性親族に与えられ、女性が自分と子供の生活基盤を守るうえで大きな障壁となる。本作の主人公ナワルは夫を突然亡くし、一人娘しかいないため、亡夫の遺産(自宅アパートとピックアップトラック)の一部が、亡夫の兄、つまり義兄の手に渡ることになる。葬儀が終わるまでは優しかった義兄も、やがて亡夫に貸していた金を返すようナワルに迫り始める。介護師としてのわずかな収入しかないナワルは少し待ってほしいと頼むが、義兄は待とうとせず、相続財産を売却して返済するよう迫る。彼女の弟も防寒するばかりで頼りにならず、ナワルは一人でこの問題に立ち向かわなければならない。

追い詰められたナワルは、裁判所での話し合いの席で、思わず「妊娠している」と嘘をついてしまう。妊娠していることになれば、少なくとも子供が生まれて性別が確定するまでは遺産の分割を先延ばしにできるからである。しかし、口から出たとっさの嘘は、ナワル自身をさらに困難な状況へと追い込んでいく。妊娠していないことを悟られないために、彼女は次々と新たな嘘や小細工を重ねなければならなくなる。このあたりから、社会派ドラマだった映画は「この嘘はいつばれるのか」というサスペンスへと変わっていく。

結末は比較的容易に想像できてしまうものの、そこに至るまでの過程はなかなか面白い。義兄からの圧力によって精神的に追い詰められながらも、なんとか自分と娘の生活を守ろうと毅然と振る舞うナワルが魅力的で、ちょっとした恋愛譚や近所との関係の変化なども織り交ぜられているため、重いテーマのわりには見やすい作品になっている。ナワルを演じたのは、パレスチナ人女優・歌手のムーナ・ハワ。夫を亡くしたばかりで、生活そのものが崩れていく女性の疲労や不安を表現するため、本作では終始やつれた雰囲気を漂わせているが、実際にはかなり魅力的な女優で、その抑制された演技が本作を支えている。

本作で描かれるもう一つの重要なプロットが、ナワルが働いている裕福な家庭の娘ローレンの妊娠中絶である。ここで重要なのは、この家庭がキリスト教徒であるという点である。ヨルダンでは中絶が原則として厳しく制限されているが、キリスト教においても中絶を原則として認めない立場は広く存在する。ローレンはナワルの助けを借りて中絶するが、それが母親に知られて怒りを買い、ナワルも解雇されてしまう。このエピソードは、本作を単純に「イスラム教による女性抑圧の映画」と解釈することを防ぐうえで重要である。映画が問題にしているのはイスラム教そのものというより、宗教や伝統、家族制度などと結びついた、女性の身体や人生を男性中心の価値観から管理しようとする社会のあり方だろう。イスラム教徒のナワルとキリスト教徒のローレンという異なる立場の女性が、異なる形で同じような抑圧に直面する構図は、そのことをかなり分かりやすく示している。

このように、とても魅力的な社会派作品ではあるが、一方で脚本には少し物足りないところもある。ストーリーそのものは比較的単純なので、人物や出来事をもう少し掘り下げていれば、『別離』のような、より複雑で余韻の残る作品になったのではないかと思う。例えば、亡夫のスマートフォンに何度も電話がかかってくるというエピソードによって、亡夫がナワルに隠していた秘密(おそらく女性関係)をほのめかしている。しかし、この設定はその後のストーリーにほとんど活かされない。このエピソードはいろいろと利用できそうなだけに、この点は少し残念に感じる。

なお、本作の背景となる相続制度はヨルダンに特有のものではないが、だからといって「イスラム教国家に共通する制度」と単純化することもできない。イスラム法を相続法に取り入れている国では、同じ親から生まれた息子と娘が相続人となる場合、男性の取り分が女性の2倍になるなど、女性と男性で異なる相続規則が存在する。一方で、女性が法律上認められた相続権を、男性親族からの圧力によって放棄させられるという問題も、別の形で存在している。つまり、問題は法律の条文だけではなく、それを取り巻く家族や社会の慣習にもある。

実際、この映画の着想にはアル=ラシード監督の身近な人物の実体験が関係しているという。夫を亡くした女性が、義理の家族から「家の一部は相続するが、あなたはそのまま住み続けていい」と言われたという出来事を聞いたことが出発点になったという。そう考えると、ナワルが直面する問題は単なる社会問題の「題材」ではなく、ヨルダン社会の中で現実に起こり得る具体的な問題を映画化したものだと分かる。全体としては、やや脚本の作り込みに甘さを感じるものの、「夫を失った女性が、自分の家と娘を守るために、なぜ妊娠していると嘘をつかなければならないのか」という設定そのものが強烈であり、ヨルダン社会の家父長制と女性の生存戦略を、社会派ドラマとサスペンスの形で分かりやすく描いた力作である。
この映画を借りた理由はアラブ語でヨルダン映画であるから。見る前から、ヨルダンの継承家父長制度が気になっている。 a patriarchy(日本語で家父長制度?)の代表例は結婚したら男の苗字を使うとか、男と女の労働賃金は男の方が高いとか、子供を育てることとか、対価無しの世話は女によって賄われるとか日本の古い昔の歴史のような制度であるかもしれない?そこに、ヨルダン王国の継承家父長制度だから、イスラム国の伝統であるシャリアという法律が入ってきていると思う。そこで、Inshallah a Boy?if God wills 男だけ? 2019年が舞台の映画だよね。

映画を観てからレビューを書いた。


ヨルダン王国の継承家父長制度に挑戦する大胆な女性をイメージしてこの映画をみたが、少しだけ期待外れだった。結局、主人公ナワールが妊娠をしているのがわかって、継承家父長制度を争う問題が九ヶ月後(出産後まで)にずれ込んだように思える。Inshallah a Boyだから彼女が女児を出産したら、この問題がまた起きるわけだが、そのための準備がナワールにできているのか?私はそれを疑問に感じていたが、最後のシーンで、妊娠しているとわかった彼女は自立するために、亡き夫の運転していたピックアップトラックの運転を練習し始める(この車を売ることを拒否していた理由がここでわかる)。これが、『自立』することによって、自分を変えていくことになる。このシーンで夫の庇護のもとに生きた妻ナワールの再出発をみせる。また、社会的にも、こういう女性が増えることで、女性の立場が変わっていくだろうということを暗示させる。ここではナワールの兄弟ですら、伝統的な男である立場から抜け出ることができず(シャリアの伝統の中に埋まっているから、考えてもいないと思う)妊娠がわかっても妹であるナワールに『おめでとう』の声もかけることがない。そして、『子供を産むまで、喪に服せ、そして、家に帰れ』と。
妊娠中九ヶ月は亡き夫に属するから、何もできないことになるが、ナワールはそれを打ち破って、運転の練習を始める。娘、ノラNORAもそれもじっと二階の窓から見ている。これは娘にとっても素晴らしい教育の一つになる。母親が生きていく見本を見せているから。


通りに座って、通過するナワールにちょっかいを出す男がいるが、滑稽なシーンだ。初めはいやな顔をして何も言わずに通りすぎるナワールだが、最後のシーンではOh, I wish I was the purse!!の無礼な言葉を聞いて、黙って通り過ぎないで、娘を待たせて置いて、Purseでこの男を殴るために戻ってくる。最高におかしい。こうしないと、最終的にはしつこく言い寄ってくると思う。