TakayukiMonji

バティモン5 望まれざる者のTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
4.0
前作「レ・ミゼラブル」でパリ郊外モンフェルメイユのヒリヒリとした現実(貧困、差別、格差社会、移民問題、暴力の構図)を圧倒的な臨場感で描いた、ラジ・リ監督の新作を試写会で一足先に鑑賞。
しかも、前作と二本立ての試写会ということで、前作の復習も兼ねて、続けて新作を観ることができた。

前作同様にフランス郊外を舞台としており、“Batimnet5”とはそのエリアにある集団団地の建物(5号棟)のこと。移民問題の背景やなぜ移民たちが郊外団地に住むようになったのか、その団地で行われている不条理な再開発プログラムの実態を知っておくと、ラジ・リ監督の人物描写や場面描写がいかにリアルかがわかる。オープニングのお葬式を上げるシーンや棺が狭い団地から運び出されるシーンは象徴的だし、移民二世の主人公が新たな移民(シリアからの)を職場で助けていくシーンなども今のフランスの実像を表していると思った。
貧困、人種や移民問題、格差社会、の問題は前作と同様だが、団地の再開発問題というよりポリティカルなテーマを扱っている。権力(政治の不条理さ)、革新、暴力の視点と社会的な排除の視点が見事に交錯していき、ラストの投げ掛けも素晴らしい。100%正しいものはなく、その中で自分は何を選択していくべきか、そんな問い掛けのある作品。フランスの根深い真実。今作で描かれたものは、たくさんの他の国でも共感できる部分の多い普遍的なテーマだったと思う。必見。
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