無何有郷

バティモン5 望まれざる者の無何有郷のレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
1.0
数あるフランス郊外映画の中でも特に稚拙で、非現実的で、登場人物があまりに戯画化されていて観るに耐えられず、本国でも大して話題にならない上に多くの低評価をくらっていた映画が日本の「バンリュー映画」の流行に乗ってしれっと公開されてしかも評判が良いというのでこの高評価の流れに異議申し立てするのと全体の平均点を下げるべくフィルマークスに飛んできました。住宅問題を扱う社会派をやりたかったのだろうし、ジェントリフィケーション問題は実際にあるのだが、現実はもっと複雑で両義的で。紋切り型の悪役とステレオタイプな郊外的情景を闇鍋の如くぶっ込んだ、繊細さに欠ける残念作。これを社会派の良作とかドキュメンタリーとまで言っている人、君が再生産しているのフランスだったら極右並のステレオタイプだからね。

細かく言うと

まずこの映画で起きる多くのことがそもそも市役所の管轄にはなく(移民難民滞在許可発行、夜間外出禁止令、機動隊出動)それらは全て県庁の役目であり、そして仮にも法治国家(法制度はかなり社会的弱者に有利)なのでこんな理不尽なことが日常茶飯事的に起きることはありえないだろう。あんな夜間外出禁止令は裁判所に訴えたらすぐ撤回だろうし、アパートを市が市場価格よりかなり安く買い取る話も本来は色々な法律や異議申し立ての手段があるし、機動隊までいれて(不可能やろ)乱暴に住民を追い出してホテルも提供しないのも不可能。そもそも郊外は住民層が偏っていることもあり大抵左派の政治家が勝つのであんなカトリック丸出しの極右が間違っても議会入りして市長はないでしょう。そしてラストは本当に酷すぎ。移民に対する負のスティグマを延長しかねない。
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