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バティモン5 望まれざる者のodyssのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
2.5
【不明なところが多くて疑問が残る】

数年前、『レ・ミゼラブル』(いちばん下のリンクを参照)で評判を呼んだ監督の映画。
『レ・ミゼラブル』は、タイトルだけからすると文豪ヴィクトル・ユゴーの大長編かとも思いますが、映画は、この小説に出て来る、今ならパリ郊外の町が、移民と警察との抗争の場となっていることを告発していました。

で、その続編的性格をもつとされるこの『バティモン5』ですが……

パリ郊外の移民の多い地区に、新市長が誕生し、移民に抑圧的な政策を推し進めていく、という筋書きです。

でも、今どきのフランスでこういう政策を推し進めたら、マスコミから叩かれるんじゃないかと思うんだけど、そういうシーンがない。

ヨーロッパに反移民の感情があることは確かですが、露骨な人権侵害にはそれなりのリアクションがあるはず。マスコミだって黙ってはいないでしょう。

ところが、この映画ではそういうリアクションが全然出てこないのです。

それに市議会だってあるはず。議会は何をしているんだと言いたくなる。この映画では市議会が市長の暴走にストップをかけるシーンもないからです。

だいたい、アパートから移民を追い出そうとして、通告から1時間以内って、いくらなんでもナイでしょう。フランスはいちおう近代国家なんだから、通告から一ヵ月程度の猶予は与えるのが当たり前でしょう。この映画には、そういう「常識」がない。市長はあたかもナチのごとくに強硬な政策を独断で推し進めている。

文字どおりのナチ映画ならともかく、21世紀のパリ郊外でこんな市長がいるとされても、あんまりうなずけません。

傾向文学という言葉が昔ありましたが、傾向映画じゃないかと思いました。
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