MasaichiYaguchi

リンダはチキンがたべたい!のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.9
チキンを巡って母娘が巻き起こす騒動と亡き父の記憶をカラフルな色使いで描き、アヌシー国際アニメーション映画祭2023の長編アニメーション部門で最高賞にあたるクリスタル賞に輝いた本作は、人物も背景も粗い素描に特定の色を重ねただけというシンプルな作画スタイルながら、アニメーション本来の魅力に溢れている。
とある郊外の公営団地に暮らす8歳の女の子リンダと母ポレットだが、或る日、母の勘違いでリンダはきつく叱られてしまう。
その後、間違いに気付いて詫びる母に、リンダは亡き父の得意料理だった「パプリカ・チキン」を食べたいとお願いする。
しかしその日はストライキで、街ではどの店も休業していた。
チキンを求めて奔走する母娘は、警察官や運転手、団地の仲間たちも巻き込んで大騒動を繰り広げることになる。
本作の監督・脚本を手掛けたのは気鋭の映画作家キアラ・マルタとアニメーション作家セバスチャン・ローデンバックで、実生活では子を持つ夫婦である2人が、ユーモアといたずら心を織り交ぜながら詩的な表現で描き出している。
更に本作には、登場人物たちの心情を表すミュージカルパートが登場し、楽しさと切なさが織り混ざった感情がよりダイレクトにスクリーンから伝わってきます。