2023年。いやァ楽しかったネ。団地住まいで母親に育てられているやんちゃっ娘リンダ、母親が勘違いで叱ったおわびに何でもしてあげると言うので「パプリカ・チキンがたべたい!」と答える。しかし折しもフランスはストの日、おっかさんはニワトリ農家からニワトリを盗み、まぁいろいろあって団地に警官隊が突入したりする。カオス!
さすがフランス、これは革命と紐帯の映画である。ニワトリ盗み、『カリ城』ばりのチャリ/カーチェイス、パプリカからそんな煙出ねぇだろ、突然のスイカサッカーなど剛腕にもほどがある展開のつるべ打ちと、イメージミュージカルシーンとか「アニメ」のイメージから逸脱しまくる作画が渾然一体となっている。
一応は子供向けのアニメ映画なのであろうがそういう枠からはみ出まくる魅力に満ちていて愉快で楽しい。子供が暴れまくって軽犯罪が多発するが、なんやかやで子供らの大勝利に終わり全てが丸く収まるあたりの都合のよさもいっそ心地よい。子供の欲求が父親と折り合いをつける裏目的もあるにはあるが、「チキンをくわせろ!」という子供の欲求が全肯定されている。
さらに裏には「デモ/スト=行動で個人の存在や欲求を主張する」とか「ちょっとプアな家庭の団地生活」なども潜ませてある。しかしこれらすべてが説教臭くなく、カラフルで独特な絵によってまんまるくポップにコーティングされていて、しかも可愛くポンポンと動くってんだからスキがない。演出も抜群、ネコも犬もニワトリもかわいい。なんてステキなアニメであろうか。世界にはいろんな映画がありいろんなアニメもある、と思わせてくれる。