ずっと見損ねていたのだ。いろんな人の年間ベストに挙がっていた作品で、なんとか劇場で観たいと思っていた。
これがまた、素晴らしかった。劇場に間に合って本当に良かった。武蔵野館は傾斜が低くてこんなに見づらかったっけ?と最初首をかしげていたが作品に引き込まれて直にどうでもよくなった。
まず音楽が最高なのだ。ピアノジャズのオリジナルの劇伴も、劇中で使用されている曲もものすごくいい。そしてシンプルなのに見てて気持ちの良いアニメーションと相まって「まさに楽しい音」としてずっとスクリーンから聞こえてくる。なんて贅沢で幸せな時間なんだろうと映画が始まってすぐうっとりした。リズム感がとても良い監督なんだろうなと思う。アニメーションとして見ていて気持ちのいいリズムでずっと進んでいく。うまく言えないが。サントラとプレイリストはしばらく聞きこむだろうなー。
ストーリーはどうやら切ない話なんだろうとは事前に聞いた感想から予想していたのだが、「PAST LIVES」と対をなす作品で驚いた。まさに「生きていく上での自分の選択を正解にしていく話」。案の定「September」で爆泣きしたのだが、なんなら最初に流れる場面でもうガンガン泣いていたのが、昔見た「メゾン・ド・ヒミコ」の中でディスコで流れる「また逢う日まで」の場面を思い出した。刹那的な幸福みたいなのにとことん弱い。
DOGが本当に人間臭いいびつなキャラクターなのが良かった。依存的で、DOGとROBOTにおける関係の非対称性にもあまり気が付いていないし、無自覚に残酷だし、寂しさの穴埋めをしようとあれこれと手を出す。ウッいつしかの自分のようだ…。と頭を抱えたくなった。わたしも誰かとの幸せな記憶の中にとっておきの曲がある気がしてきた。ROBOTが善性しか持ち合わせていない無垢なる存在だから、DOGの人間臭さがまた引き立っていた。
生と死の狭間にあるような状況のROBOTが度々見る夢も切なくて不穏で、良かった。オズの魔法使いのモチーフが繰り返し出てくるのも。タップの場面、不気味良い。
80年代のニューヨークの風景も楽しい。ニューヨークに行ったことがない人間にとっては「テレビや映画で見たあのニューヨーク」の風景や文化なのだが、当地を知る人々にとっては「失われた9.11以前の風景」でもあると映画を観た後に友だちに教えてもらい、なるほどと深くうなずいた。いやなんだ、エモ致死量でしょう。困りますよ。
はーーいい映画だったな。去年見ていたらベストに必ず入れていたであろう。