ノラネコの呑んで観るシネマ

SONG OF EARTH/ソング・オブ・アースのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.2
ドキュメンタリー作家のマルグレート・オリンが、ノルウェー西部の大自然に抱かれて暮らす、年老いた両親の一年を追った作品。
大西洋から113キロも伸びる、ノールフィヨルドの最深部。
巨大な氷河が海に迫る風景は、殆どファンタジーの世界だ。
おじいちゃんは、四季折々の顔を見せる荘厳な自然の中を歩きながら、自分の人生や一族の苦難の歴史を語り、おばあちゃんは土地に伝わる民謡(?)を誦する。
端的に言えば、もの凄い景色の中に住んでる人の、もの凄く技術力の高いホームビデオ。
何が起こるでもなく、刻々と移り変わってゆく、人と自然を映し出してゆく。
皮膚のシワと氷河のゴツゴツを、対比する描写が面白い。
圧倒的な存在感を持つ氷河も、今は年々小さくなっていると言う。
山の中腹に、百年以上前に先祖が植えた巨大なトウヒの木が聳え、村のシンボルツリーとなっているのだが、おじいちゃんは映画の終わりに、もう一本トウヒの苗木を植える。
はたして百年後に、この風景はあるのだろうか。
そしてその中に、人はいるのだろうか。
自然と人と時間が織りなす、静かなる映像詩だ。
美しいが、しかし睡眠導入効果抜群の映画ゆえ、疲れた時の鑑賞はおすすめ出来ない。
実際、劇場でも小さなイビキが・・・f^_^;