荒野の狼

クリプトボーイの荒野の狼のレビュー・感想・評価

クリプトボーイ(2023年製作の映画)
2.9
「正直者は幸を得る」という事ならわかるが、「正直者はバカを見る」というのは間違っている。それは飽くまで傍(はた)がそう見るだけであって、正直者は決して自分ではバカを見たと考えないから正直者なのだ。トルストイの『イワンの馬鹿』は、そういうお話として語り継がれているから普遍的な童話なんである。
一般的には、どうしても「被害者」イコール「正直者(善)」にしたい心情というものがあるけれども、これは「バカはバカを見る」と言っているに等しい。欠点を持った人間はいくらでもいるが、真にバカという人間がいない様に、真に正直者などいないのである。その意味でこの映画は、そこ迄の昇華には至らず、残念ながら決定的に本質を外している。ありえない、とはいえそれでも真理を語ろうとするから、メルヘンはメルヘンたりうるのだ。
荒野の狼

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