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メイド・イン・ホンコン/香港製造 デジタル・リマスター版のclementineのレビュー・感想・評価

3.6
 電気を消した部屋の窓からの景色が攻殻機動隊の素子の部屋を思い出す。
 97年香港はイギリスから中国へ返還される。19年からは民主化のデモが始まり一年以上続くが,20年のCOVID-19により集会の自由が制限され,5月28日に中国が国家安全法を香港にも導入することを決定する。
 この映画は96年にスタッフ5人で撮り始めたそう。チャウ役の李燦森(サム・リー)も街で見かけてスカウトした。暑いんだろうがサム・リーはほとんど半裸かへそ出しだった気がする。今はあまり見ない男性のへそ出しも,サム・リーはよく似合ってた。冷やしブリーフも気持ちよさそうで,暑い夜を描いた映画を観るといつも汗だくで寝たくなる。どうせ少ししたらクーラーをつけてしまうのに。
 97年の香港ということで舞台自体は映えるのだが,そこまで印象的に切り取れているとは思えなかった。今も似たようなものだろうが,低い階層に産まれてしまうとその時点で永続的な閉塞が襲ってきて,にっちもさっちもいかなくなってしまう。とは言え彼は日々沼に入り込む選択をしているのだが,抜け出ようとすると簡単にはいかず,今度は人は生まれた以上生きねばならぬという暗黙の義務が襲ってくる。

 ヴィクトリア・ピークスの上で爆発しそうなアドレナリンを夢想する表現はとてもよくできていた。

 正直そこまで優れた映画だとは思わなかったけど,『台北ストーリー』のように後から激烈に見返したくなるかもしれない。
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