Monsieurおむすび

タタミのMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

タタミ(2023年製作の映画)
4.1
東京国際映画祭2023にて。

イランの柔道代表選手が国際大会でイスラエル代表選手との対戦拒否を自国政府から強いられた実際の出来事に着想を得たドラマ。

緊張感溢れる政治劇と瞬間ごとに情動が沸き立つスポーツのマッチングが見事に合致して、終始キリキリとした不穏さを構築。
画面設計も小さい画角とモノクロ映像により閉塞感と厳格さを演出。

ボクサーでもある主演女優がオリンピックレベルのコーチのもとで半年間トレーニング。アクションを99%スタントなしで行い、対戦相手や審判までプロを配役し、試合のコーディネートはジョージア代表コーチが務めるという徹底したリアリティの追求。

よく目にするとんでもない日本文化描写だったら嫌だなと思っていたが杞憂に終わる。
タイトルに「tatami」とつけるほど日本や武道へのリスペクトを示し、流麗なカメラワークもあって圧巻の試合シーンになっている。

自由のないイラン国内の情勢批判であると同時に、非常に力強い女性たちの連帯を印象づけるフェミニスト映画でもある。
重苦しい場面が続くが、そういったこともあってエンパワーメントとも言える。

政敵であるイランとイスラエル。両国出身の監督による共同監督作品で、当然イラン国内では上映禁止。
撮影自体もジョージアで秘密裏に敢行され、スタッフの出身国は多岐にわたるとのこと。
スポーツと映画を通した境界線を超えた架け橋で貴重かつ意義のある作品だった。
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