Monsieurおむすび

ありふれた教室のMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.1
#ありふれた教室
世代も背景も主張も違う、個が共生する学校という小さな国家で、不確かな疑惑に行使した正義を巡って生まれる混沌スリラー。

加害を疑われた側があまりにも強烈に否認することで、被害者や周囲の凡ゆる認知が揺らいでいき、小さな不満を抱えていた者たちへナニカが感染していく恐ろしさ。ひとつ対応を間違えただけで、取り返しのつかない事態に陥る拡散力とスピード感は、今日的な問題ではあるが、動き回るノヴァク先生を捉えるカメラワークや編集のキレの良さもあって、緊張と不穏が爆発的に空間を満たしていく。

じゃあ、どうすればよかったのか?
何が真実なのか?
もちろん安易な正解があるわけもなく、誠実さと規則が持つ矛盾に、頭を擡げ、胸を掻きむしるようにノヴァク先生と過ごす居心地の悪さは宛ら密室劇。

ラストは、規則を尊重せずに自分の主張を貫いたオスカーが、ある種の勝利を誇示するように玉座に鎮座していたが、それすらも正しいとは言えず、ノヴァク先生との間に生まれた確執とは別に、綺麗に完成されたキューブだけが2人の間に通じ合うものがあったことを示していた。
それだけが確かなものだった気がする。
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