Jellyfish

ありふれた教室のJellyfishのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
3.0
原題は “Das Lehrerzimmer” -「教員室」
いわば、ドイツの学校が舞台の『ヨーロッパ新世紀』。欧州の閉塞感とか、民主主義の機能不全とかの話と思う。

主役は他の学校から異動してきたばかりのルーマニア出身の女性教師。明示はされないが、前の職場で何かあったことが仄めかされ、不吉なものを感ぜずにはいられない。

見方によってはあの親子、単なるモンスター・ペアレントとモンスター・スチューデントで、先生側の引け目は録画していたことなのだが、学校側も一枚岩ではなく、「不寛容方式」(初めて聞く言葉だ) を謳いながら、隠し撮りや監視カメラに対しては「人権侵害だ」と抗議する先生も居るというダブル・スタンダード。

詰まるところ手段の問題であるのなら話し合えば良いものを、対話すら拒絶されるし、生徒は勝手に学校新聞に扇情的な記事を掲載するしで、理性的なヨーロッパというイメージはもはや昔日。寄って立つ「正義」とか「正しさ」が、対話不能なほど「多様化」してしまっているのだろうか。

冒頭「これは証明か、主張か?」と先生が生徒に問うシーンがあるが、本作は証明に失敗した先生の話であり、元々答えのない問いではあるのだが、観るものを置き去りにするこのラストは解釈に困る。
野心的だが、「訳のわからない感動」まであと一歩の惜しい作品。
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