驚いた、まさか泣くとは思わなかった。
文字通り大人の見る絵本であり、ラストの朝ごはんのシーンに至って驚くほど父親がかっこよく見えるのは脚本の妙に小津氏の演出が光ったからであろう。
主人公の兄弟達あれほど悔しがったのは〝自分の父親は凄い〟と信じきっていたからだし、子供らが喧嘩を経ればケロリと仲良くなるのも大人のしがらみにまだ巻き込まれずに済んでいるが故のシンプルな価値観の賜物だ。中将になる理由には希望があるし、ラスト言外に「だから頑張って生きるんだ」というメッセージが込められていてよかった。そういう意味ではハイティーンには見せても良いかもしれない。
出てくる大人たちもシンプルで前向きで柔軟で、この〝世代を超えた成長を胸に秘める〟テーマを持たせた作品の後に戦争がやってきたのかと思うと胸が締め付けられる。