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晩春 4Kデジタル修復版のnowstickのレビュー・感想・評価

晩春 4Kデジタル修復版(1949年製作の映画)
3.8
自分は特段リベラルな人間って訳ではないが、本作の家父長制的な世界観はかなり気になってしまった。
小津安二郎作品の良さは、戦争とか殺人とか、「滅多に起きないが、みんなに関係がある大きな出来事」を描くのではなく、「全員にとってどっちでも良い話だが、世界中いつの時代にも、何処にでも転がっていて、全員が共感できる出来事」を描いている事だと思う。昨年、小津安二郎のサイレント時代の名作、「生まれてはみたけれど」を見たのだが、他の監督だったら映画にしないような繊細な出来事を、映画に落とし込んでいて凄いと思った。
そう考えると、本作の家父長制的な世界観は、既に多くの現代人が共感しづらいテーマになっていて、小津安二郎の普遍性という点では良くないという印象を受けてしまった。

とはいえカメラワークは、やはり素晴らしく、普通にある程度は面白かった。
「ゲイリークーパー」が最後まで登場しなかったり、能のシーンでは登場人物の表情のみでストーリーを展開していたりと、随所にアイデアが見られた。
小津安二郎、生誕120周年、没後60周年の特集上映で本作を見たが、もう少し小津安二郎作品を見ていこうと思う。
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