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ヘレディタリー/継承のnowstickのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.5
ホラー映画は怖いという先入観から、あまり見てこなかったのだが、再上映をやっていた事から映画館にて鑑賞。

結論、全く怖くはなかった。そもそも、「ホラー映画が何故怖いのか?」がよく分からなくなってしまった。
本作だと、心霊現象なのか幻覚なのかが、主人公にも観客にも分からないまま物語が進む。しかし仮にそれが心霊現象なら、スピリチュアル系を全く信じない自分は、「そもそも現実ならこんな事起こらないしな」と思って安心して見てしまうし、それが幻覚なら「そもそも映画の中ですら、こんな事起こってない訳だしな」と思って安心して見てしまう。楽しそうなSF映画なら、それが映画の中だけの出来事だと分かっていても、必要以上に切り捨てずに楽しめるのだが、不愉快な出来事は切り捨てて考える自分にとって、ホラー映画はどう思ってみたら良いのかが分からない。だからと言って、あえて怖がれるように、ある種の自己暗示にかけながらホラー映画を見るのも、意味が分からないだろう。

そこで、怖がるのを諦めて単純に物語として面白がるにしても、本作のようなホラー作品は、SFとしてもミステリーとしても中途半端だ。SFならその世界線のルールを明確に決めて、その範囲内で物語を展開すべきだし、ミステリーなら全ての謎が一元的に理解できるような結論に導かれるべきだ。しかし、心霊か?幻覚か?が作中において、観客や登場人物にとって不明瞭であることを利用して不安感を煽る構造であるため、世界観がフワフワしていて、SFとしてもミステリーとしても成立していない。
また、物語の一元的な理解を諦めて「前衛的なぶっ飛んだ映画」として楽しもうとしても、恐怖という身近な感情を煽る為に、ある程度共感性のある物語にされているため、そこまで内容がぶっ飛んでいる訳でも無く、面白がれない。

また、主人公達が作中で何の落ち度もない行動を取っているなら、「悲劇」として見る事も可能だが、精神的に不安定な家族が孤立した山奥で、病院にも行かずに日々生活し、怪しげなスピリチュアル系の物事を信じ始め、トラブルが起きたとしても行政等に助けを求めず、適切な対処を怠ったとしたら、ホラー作品で無かったとしても大惨事は免れないだろう。

色々と書いたが、ホラー映画の面白がり方を理解する為に、「ローズマリーの赤ちゃん」や「エクソシスト」といった、古典的なホラー映画を見て、勉強しようと思う。
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