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東京物語 4Kデジタル修復版のOMCのレビュー・感想・評価

東京物語 4Kデジタル修復版(1953年製作の映画)
4.7
尾道に住む老夫婦が東京の子供達に会いにいく話。
初めての小津安二郎作品です。
終始淡々と話は進んでいく。大きな事件が起きるわけでも無く、ごく普通の家族の会話が交わされて、親の気持ち、子の事情が、少しずつ、ゆっくりと描かれていく。
息子や娘が独立して家庭を持てば、当然そっちが生活の中心になって優先される。映画では彼らの利己的な面が描かれるが、それは仕方ないこと、誰もがそのようになる、でもなんだか寂しいねとセリフや表情で言わせている。これっていつの時代でも変わらない普遍的なテーマだと思う。
作中で戦争のことはほとんど描かれないが、この映画の公開は、終戦のわずか8年後。日本国民みんなが苦労を乗り越えて復興を目指した真っ最中。
戦争で大切な人を失った人たちの悲しみや悔しさ。そして同時に自由と経済発展への期待。当時の人がいろんな気持ちを胸に抱えながら生きていたことに思いを馳せる。
戦死した息子の未亡人を演じた原節子さんが美しくて個人的に好みすぎた。ラスト近くでのセリフ「わたくしずるいんです。」には完全に心を持っていかれました。
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