MasaichiYaguchi

水平線のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

水平線(2023年製作の映画)
3.7
俳優の小林且弥さんが長編初メガホンをとり、「凶悪」で共演したピエール瀧さんを主演に本作は、福島県のとある港町を舞台に、大切な人ときちんとお別れできないまま立ち止まってしまった父娘が、或る遺骨を巡って葛藤し、自身を含めて向き合っていく様が繊細に描かれる。
震災で妻を亡くした井口真吾は、個人で散骨業を営みながら、水産加工場で働く娘・奈生と2人で暮らしている。
高齢者や生活困窮者を相手に散骨を請け負う彼のもとに、かつて世間を震撼させた通り魔殺人事件の犯人の遺骨が持ち込まれる。
苦しい選択を迫られた真吾は或る決断を下す。
心に深い傷を抱える主人公・真吾をピエール瀧さんが演じ、真吾の娘・奈生を栗林藍希さん、真吾を執拗に付け回すメディアの江田を足立智充さん、奈生の同僚・河手を内田慈さん、同じく同僚の渡部を押田岳さん、奈生の親友・沙帆を円井わんさんが演じている。
戦争や震災等で悼みが周囲に溢れていると感じられるこの頃、本作はそれと向き合い、前に一歩踏み出すことを我々に投げ掛けているような気がする。